「三週間前の日曜日」

「?」


首を傾げる綾織ちゃん。
でも一瞬、顔が強張ったのを見逃さんかった。


「遊園地、おったじゃろ。越知月光と」

「えっ……」


俺は見た。二人が手を繋いで歩いていたのを。
二人とも周りより背が高いから目についた。


「あの日、何かあったんじゃなか?」


次にシフトが被った日には、笑顔が変わっていた。

遊園地で見かけた時より後に、何かがあったとしか考えられん。


「あの日、は」


綾織ちゃんは俯いてひとつ、溜め息を溢した。

観念したかのように顔を上げて、真っ直ぐ目が会う。


「別れたの」

「……は?」


あっけらかんと告げた彼女に、思考が止まってしまって気のない声を漏らしてしまった。


「あの日、ツキと、別れたの」


ツキ=ツキさん=月光=越知月光。

部活の先輩が呼んでいた呼び方を思い出して、誰であるかを理解した。

楽しそうにデートしていたその日の内に、二人は別れたというのだ。


「……なして別れたん?」


ホントに、何が起きた?
綾織ちゃんから目を逸らさずに、テーブルに片肘ついて頬杖。

ほら、また寂しげな笑顔。

綾織ちゃんは空になったコーヒーカップに目を落とす。


「帰り道で、言われたんだ」



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