データマンに挟まれて
<春告視点>
なんで、俺、白桜みたいな慎重派に育たなかったんだろう?
根本的な人間性が多々違う双子の片割れを思いながら、俺は今の状況をどのように打破しようか必死に頭を巡らせていた。
本館の通路の曲がり角で人にぶつかってしまった。
そのぶつかりし、目の前にいる人物は乾貞治氏である。
いやいや何を動揺する必要がある? いくら昔の父親そっくりでも、俺ぱっちり開眼してるし、小柄だし、立海の制服着てるし……て、これは理由として全部ダメだ。貞治さんなら父さんの開眼見たことないはずないし、父さんのおかっぱの頃知ってるし、父さんに訊かれたら今の立海に俺という生徒が存在しないってバレる。
よりにもよって今の俺はパワーリストを填めている。非常によろしくない。
しかしデータマンである貞治さんだ。未来の存在がタイムスリップするなんて非現実なことを確率として考えつくはずがない。
と、ここまでをものの数秒で考えた。
あまり長いこと固まっていては怪しまれるだけだ。
俺と柳蓮二はただの他人。それでシラを切り通そう。
「ぶつかってしまい、すみません。考え事をしていたもので」
「こちらこそすまない。不注意だった」
「いえ。以後気をつけます。それでは……」
「ちょっと待ってくれないか?」
そのまま通り過ぎようとして、引き留められた。
やーな予感。
逃げたら追われる。
仕方なく脚を止め、徐に振り返る。
「……何でしょうか?」
「キミは柳蓮二の親戚かい?」
「いいえ。テニス部レギュラーの柳さんが俺のことなんて知ってもいないでしょう。まさか親戚だなんて」
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