過去と未来の、あくまで可能性
<透視点>
真っ暗な中で目が覚めた。空調の稼働音が聴こえる。
車椅子の背もたれに背を預けて大きく伸びをする。
しばらくして暗闇に目が慣れて、辺りを見回す。
「ここは、倉庫か……?」
倉庫内で声が少し反響する。
おかしい。俺は確かアキたちと待ち合わせしていた広場にいたはずだ。
アキたちの姿が見えたのは覚えている。その後からの記憶がない。
アキたちはどこだ?
不意にパチッと音がして、倉庫内が明るくなった。急な光に視界が真っ白になる。
やがて目が慣れて、倉庫内がはっきりわかる。
床にアキ達が転がっていた。
「アキっ、忍足っ、日吉っ!?」
思わず車椅子からずり落ちるように降りて、ほふく前進で彼らに近づき身体を揺する。
「アキっ、アキっ!! しっかりしろ!!」
「…………ししどうるさい」
うつ伏せになっていたアキがコロン、と転がって仰向けになる。両足を上げて、下ろす反動で起き上がる。
「おはよう宍戸。床痛いし埃っぽいし、何で俺たちこんなとこで寝てんの?」
しゃがみこんで俺の腕を肩に掛け立ち上がり、俺を車椅子に乗せる。
服についた埃を払い、未だ倒れている二人のところで再びしゃがみこんだ。
「ほら、しんちゃん、日吉、起きなよ」
「ほれほれ」と人差し指で二人の頬や脇腹をブスブスと刺すアキ。
忍足の身体が跳ねる。
アキ、楽しそうだな。
日吉がアキの手を叩き落としたところで終了した。
「皆、起きたね」
棚の影から立海の幸村が出てきた。
「覗き見なんて、やるねー」
「楽しそうだったから出てきづらかったんだ」
「いつからいたんだ?」
「見てたのは滝が指ブスブスしてるところから。倉庫に入って照明つけた時から宍戸の声は聞こえてたよ」
「最初からじゃねーか」
「あの……」
日吉が立ち上がり、口を開いた。
「俺たちはどうしてこんなところにいるんですか?」
「せやな。俺たち宍戸迎えに広場におったはずやもんな」
俺もアキも疑問に思っている。
俺たちは幸村に目を向けた。
「なぜ四人が倉庫にいたのかはわからない。俺たちはテニスコートで倒れてたからね」
「『俺たち』ってことは、他にも誰かいるんだよね?」
「ああ、そうだ。今わかってることを説明するよ」
どうやら俺たちは過去に来たらしいこと、屋内テニスコートにいたメンバー、三つの注意事項を聞いた。
- 1/4 -
[*前] | [次#]