ヘアバンドの少年に、双子が待ったをかける。
「ちょっと待て蒼也」
「合同学園祭ってことはU-17の合宿より前だから、雅治さんはまだ未来の仁王姉弟に会ってないってことだ。つまり雅治さんに話しても通じない」
蒼也と呼ばれたヘアバンドの少年は頭を垂れる。
その隣で、長い髪を後ろで一括りにした男が口を開く。
「紛らわしいから全員名前呼びにした方がよか」
「マサキは標準語で話せよ。一発でバレるぞ」
「すっぴんの姉ちゃんのが一発じゃ」
「うっさい」
姉ちゃんと呼ばれた女は腰に手を当てて、マサキと呼んだ男を睨む。女の腰まである茶色い髪が揺れる。
ミコトがぱんっぱんっと手を叩く。
「はい、じゃあこれからやるべきことをまとめるよ。まず他に未来から来ている人がいないか手分けして探そう。見つけ次第ここにつれてくる。見つけられなくても正午には一度ここに集合。開場後は一般の人も増えるから、それまで真守さんと遠山はここで待機」
「なんでや?」
「制服着てないだろ。追い出されるよ。ああ、紛らわしくなるから名前呼びの方が良いんだっけ。皆も気をつけて。特に蒼也。部長、副部長って呼んでもダメだよ」
「だとさ蒼也。副部長じゃのうてマサキ先輩と呼びんしゃい」
「マサキは真守さんの言うように標準語な。あと親世代に俺たちが未来から来たことを明かすのは必要な場合だけにしてくれ。非現実的な上に、それを証明する術も、証言してくれる人も、ここにはいない」
「必要な場合って、例えば?」
蒼也に糸目が答える。
「例えば、願いを伝える上で説明する必要がある時。それ以外は無いとは思うが、感づかれた際、明かしても害がなさそうな時。確実に協力が仰げそうな時。くらいだな」
「だね。他の人を見つけたら」
命は人差し指を立てる。
「名前呼び」
二本目を立てる。
「仮定ではあるけど帰る条件」
三本目。
「未来から来たことの黙秘。以上三つの注意事項を伝えること。言い忘れてたけど、願いがある人はそっちを優先しても構わない。それでは解散」
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