学園祭2日目の来場者
「これでこの場の全員、気がついたね」
屋内テニスコートの中で最後まで倒れていた少年が目を開けた。
黒髪ストレートでヘアバンドをしている少年に青みがかったベリーショートの男が微笑み掛ける。
入り口の扉が開いて現れたおかっぱ頭の男に、瓜二つの男が手を挙げる。
「おかえり白桜。どうだった?」
「外を見てきたが、どうやらここは過去の関東合同学園祭の会場。しかも二日目らしい。開場前、それもまだ七時前で生徒の姿もほとんど見なかった」
ウェーブがかった茶髪に逆光眼鏡の男が眼鏡を中指で押し上げる。
「この場にいるのは立海レギュラーの一部と遠山くんと真守さんだけのようですね」
「でもあの時、俺は万葉とコシマエとみっちゃんとおったで。それから氷帝の何人かも近くにおったし」
赤髪にカチュームをつけている男が周りを見渡す。
「俺は妹と待ち合わせしてたんだけどね」
「俺は純太たちと待ち合わせてたっス」
青みがかった髪の男とヘアバンドの少年が続く。
「コシマエたちどないしてんやろ」
「つかコシマエって誰?」
「たっちゃんだよ」
「いや、部長……それ誰っスか?」
「青学の越前だよ」
「命はいつの間に越前と仲良くなったのだ?」
ミコトと呼ばれた男に対して、淡い茶髪に紺のキャップを被った男が問いかける。
「しかし、あの時同じ場所にいた彼らが、ここにいないというのも変だね。彼らもこの時代に来ているかもしれない」
問いはスルーされた。
「確かに、その可能性も否定できない」
おかっぱ頭の双子の、先ほどシラオと呼ばれていた糸目の方が、命に同意した。
おめめパッチリの方が続ける。
「以前、マサキから聞いた話、当然仁王姉弟は知ってるし、立海メンバーは覚えてるよね」
「俺知らへーん」
「はいはい。マサキがお父さんである雅治さんから聞いた話で、U-17の合宿中に腕を壊してリハビリ施設にいた頃、未来からきた仁王姉弟に『テニスをやめないでほしい』と言われた。という話だよ」
「で? コシマエたちが来てるかもしれへんってことと、どう繋がるんや?」
今度は糸目が続ける。
「ここで俺たちの仮定だが、『親、もしくは願いに関係する人物の近くに現れている』かもしれないことと、俺とハルや現在の仁王姉弟のように『願いはないが、巻き込まれて過去にいる』可能性もある」
「願いがあるなら願う相手の近くに。願いがなくとも願いがあるものの傍にいるかもってこと。他の連中は固まって、もしくはバラバラにこの時代にいるかもね」
「しかしこれはあくまで仮定。別の理由から俺たちは過去に来て、その理由に当てはまらないために、この場にいない者は過去に来ていない可能性も否定できない」
「えぇ〜、不安になること言わんといてや。でも来ている確率の方が高いんよな?」
「ああ」
「ほんなら、はよ皆見つけて、元の時代に帰っ……どないして帰るんや」
「出た、ノリツッコミ」
「あほ」
赤髪がヘアバンドを叩いた。
「帰る方法については、先の話を聞いた時の詳しい描写から推測して『願いを口にした直後』もしくは『本来その場所にいられる時間を過ぎること』によって自動的に帰還となるだろう」
「その詳しい描写は知らへんけど、帰れるならええわ」
「『時間の経過』なら、俺たちも同じ会場で合同学園祭二日目。そしてあちらは開場後一時間ほどであったから時差は約三時間。本来なら後夜祭までいるとして、この時代では結果発表くらいがタイムリミットだ」
「で、帰る条件が『願いを口にする』ことだとしたら、どうやって条件を満たすのだ?」
キャップの男が双子に問いかける。
ヘアバンドの少年が首を傾げる。
「副部長のお父さんに相談して、願われる側の人たちにうまく説明して集まってもらう、とかどうっスか?」
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