<御景視点>
俺の予測通り、千歳万葉は屋内プールに戻ってきた。
彼はプールサイドのベンチに転がり、呟くように俺の名を呼ぶ。
「御景」
「なんだ」
「ここ、過去の学園祭やで」
「……は?」
万葉は俺より早く気がつき、二人が気づくより前に屋内プールを出ていた。
会場内をぐるりと見て回って、ここが過去の学園祭であり、開場時間直前であると判断したらしい。
図体のデカいこいつが誰にも見つからずに歩き回れたのは、恐らく才気煥発の極みの賜物と思われる。
「なら、他の連中はどうなったんだ?」
「立海の仁王と柳生を見かけた。他のヤツはわからん。ばってんみっちゃんたちも、きっとおるはずや。あの時、広場に居合わせたヤツら皆」
根拠としては、単に俺や万葉、越前に幸村妹、万葉が見かけたという柳生と仁王が、あの時広場に居合わせたというだけのことだが。
はっ、としたように万葉は上体を起こして周りを見回した。
「あの二人はどないしたんや?」
「……恐らく、俺たちの時代の青学の模擬店がある場所に向かった」
あの二人は、ここが『過去の学園祭』だと知らない。
「…………」
再び寝転ぶ万葉。
「ま、あの二人ならしっかりしとるし、気にせんでええやろ」
あまりに暢気すぎるコイツに、ちょっとムカついたから片頬を伸ばしてやった。
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