<純太視点>



目を開けたら、見たことない天井が視界に広がっていた。


「起きたか?」


上から顔を覗き込む影。

青学のルーキー、手塚光成。
大会で何度か見かけたことがあるくらいで、こうして直に、面と向かって話すのは初めてだ。

ここはどこか聞こうとする前に、手塚さんに手で制される。


「これを使うといい」


差し出されたのはメモ用紙とペン。


「去年から、声が出ないと聞いた。それに俺は手話がわからない」


俺は頷いた。

去年、立海と氷帝の試合を見に行った帰りに事故に遇った。その際に頭を打った後遺症で声が出なくなった。

メモとペンを手に取り、質問を書く。


[ここはどこ?]

「ここは学園祭会場内にある医務室だ」

[どうしてここに?]

「俺たちはステージ裏に倒れていた。俺が目を覚ました時にはこの時代の跡部さんがいて、事情を話したら、しばらくここにいるよう言われた」

[この時代?]


その言い方が引っ掛かる。
跡部さんと言ったら跡部景吾さんの方だろうか。


「ここはどうやら過去の関東合同学園祭らしい。父さんたちが中学三年生の時だ」

「?」


首を傾げつつも、とりあえず相槌を打つように、こくりと頷く。


「初めは、俺たちは父さんたちの親戚だと思われた。名前を聞くまでは俺も跡部さんを本人だとは思わなかった。俺たちは父親にそっくりだが、年齢的にこの時代の父さんたちに息子がいるはずがない。出来る限り事情を説明したが半信半疑のようだった」


頷く。


「しかし俺たちがこの時代の人たちに接触して混乱を招くことを警戒されたらしく、ここに連れてこられ、いるように言われた」


筆談は苦手だ。
書いてる間は沈黙になるし、自分の語彙の無さや、あまり漢字が書けないことが露呈するから。

何と言葉にすれば良いかわからず、しばらく沈黙。


[なんきん?]


ようやく書き出した言葉。
ただただ不安しかなかった。

その不安を払拭するように、頭を撫でられた。


「跡部さんが決して悪い人ではないことを俺たちは知っている。悪いようにはされないはずだ」


一つしか歳が違わないのに、どうしてこうも冷静でしっかりしてるんだろう?

跡部さんは兎も角、手塚さんを信じる意味で、俺は大きく頷いた。



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