「それは未来の立海テニス部、だろう?」
「「は?」」
橘と少女が目を見開いた。
男子はやはり、あまり驚いていないようだ。
「君はあまり驚いていないようだね」
「さっき十分驚いたさ。見知った人物が若返っているんだからな」
橘が息をついた。
「……まるでタイムスリップでもしたかのようだな」
「まさに、その通りのようだ」
「しかし、皆にどう説明したものか……」
この非現実的な状況。
先ほど「後で報告する」と伝えた不動峰の面々に、何と説明すべきか。
まさか「タイムスリップしてきた我が子とその従妹だ」などとは言えまい。
「ならばこうしよう」
立海生である兄を捜して迷い込んだ少女が、一緒に捜していて男子ともはぐれてしまった。
一人お化け屋敷をさまよっているところ、男子が見つけた。
「…ということにしておいてくれ」
敢えて作業中の不二に向かって言った。
「ああ、わかったよ」
やはり聞き耳を立てていたようだ。ただ他人事だと言わんばかりに楽しげに微笑んでいる。
「春告から聞いたのだが、」
フリーズしたままの少女の頭に手を乗せ、髪があまり乱れないように撫でる。
「正午には一度、皆がテニスコートに集まるそうだ。今はいなかったとしても待っていれば君のお兄さんに会えるはずだ」
顔を上げ、目を輝かせる少女。
ああ、やはり。
笑顔と髪の触り心地は赤也にそっくりだ。
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