ところ変わって、青学の喫茶店。

不二と越前は開場前の来客に一時作業の手を止めたが、貞治が一言告げると何事もなかったかのように作業に戻る。

貞治は俺たちをテーブルに促し、準備に戻った。

俺たちは席に着く。

越前は全く気にする様子もなく奥に行き、貞治は作業しつつも聞き耳を立てている。恐らく不二もだろう。


「早速だが。二人とも、春告という名前を知っているだろうか?」


少女が目を瞬かせる。


「ハルちゃん?」

「何故今の柳蓮二が彼を知っているんだ?」


どうやら男子の方は状況を薄々察しているようだ。

俺は橘に向き直る。


「橘、この二人の件は俺に預けてくれないか?」

「そこは『俺たちに』だろう蓮二」


貞治が口を挟んだ。


「あっ、ねぇねぇ、皆さん」


更に少女が話に割って入った。


「蒼也っていう、水色のヘアバンドしてるお兄ちゃん、見なかったですか?」

「蒼也?」


橘が反応した。


「橘、知っているのか?」

「さっきまで試合していた」

「誰と誰が?」

「俺と、蒼也と呼ばれヘアバンドをした立海の男子が、だ。なかなか骨のあるやつだったが、彼はテニス部じゃないのか?」

「立海テニス部に蒼也という名の部員はいない」

「でもお兄ちゃんテニス部だよ」


首を傾げる少女。



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