<白桜視点>
ラリーがあまりにも長引きすぎたので、急遽1ゲームマッチとなった。
それから試合運びは早いもので、現在40-30で橘さんが引き続き優勢だ。
蒼也はスタミナ切れのようだ。
開場時間まで40分弱。
ふと、データを取る筆を止め、財布の中の小銭を確認する。
999円中、昭和硬貨だけで352円、平成の現在までの硬貨で525円、使えないのが122円か。使えるのは昭和、平成合わせて877円。
500円玉を集める人間を除けば優秀な方か。
仁王姉弟は500円を貯めているから、財布に入れっぱなしなら比較的高い額が期待できる。
命と直紀は募金箱があれば5円玉、1円玉を全て入れてしまうからな。命自販機で使えないからだとか言っていたが。
有り得ない状況に、俺も少なからず動揺していたらしい。解散前に通貨の問題まで思い至らなかった。ハルも何も言わなかったしな。
そもそも、皆財布は持ち歩いているのだろうか?
……こういうデータもとっておけばよかった。
項垂れて溜め息を吐いてしまう。
「ウォンバイ、橘」
勝者を告げる真守さんの声が聴こえ、顔を上げる。
とりあえず、ここにいる人、開場前までに戻ってくる人には伝えておこう。
あとは正午までに買い食いしそうな人に注意するしかない。
蒼也と握手を交わし二、三言葉を告げて去っていく橘さん。
俺はノートを閉じ、ペンのキャップを閉めて立ち上がった。
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