「そうか……。俺は乾貞治だ。キミの名前を教えてもらってもいいかな?」
やだ。この人から早くおさらばしたい。
「……皆からはハルと呼ばれているので、そう呼んで下さい」
「わかった。では立海の三年に『ハル』と呼ばれている人物はいるだろうか? 蓮二」
「え゛」
貞治さんが俺の向こう側に問いかける。
しまった。思わず声を漏らしてしまった。
恐らく俺の動揺を誘うフェイクだ。
そう考えつつも反対側に首を回すと。
「少なくとも『ハル』と呼ばれていて、なおかつ俺に似ている三年の生徒はいないな」
いた。本人いた。
やだ、俺データマンに挟まれてる。
てか父さん立海の三年全員覚えてんのかよ。
いや、跡部さんは当時の氷帝の全校生徒覚えてたらしいから、父さんでも有り得る。
「何故、立海にいないはずの人物が立海の制服を着用し、その上パワーリストまで着けているのか」
「詳しい話を、聞かせてもらおうか」
ああ、もう、いいや。
こっちが避けようとしても相手が放っといてくれないんだ。
もうなるようになれ。
お手上げだ。俺は肩を竦めた。
「わかりました。信じてもらえるとは思いませんが、正直に話しますよ」
開場時間まで、あと一時間弱。
とりあえず、これ以上誰かに出会すのは危険だ。
「人に見つかると面倒なので、人が来ないようなところへ場所を移しましょう」
「わかった」
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