<蒼也視点>



テニスコートに戻ると、真守さんと遠山さんこと白金さんが試合をしていた。


「……なにやってんスか、二人とも」

「何って、テニスやで」

「開場時間まで暇だから打ち合ってた」

「ラケットは倉庫から拝借したで」


呆気に取られてる俺の後ろにいる人物に気づいて「おお、不動峰の橘さんや」と声を上げる。

真守さんがこっちに近づいてきて、持っていたラケットを俺に差し出してきた。


「お前らもテニス、しにきたんだろ」


俺はラケットを受け取った。
その際、彼女の足元が目に入って疑問が浮かんだ。


「なぜ二人とも、裸足なんだ?」


橘さんが俺の疑問そのままに問いかけた。


「ハイヒールのブーツを履いたままで白金を相手にできないだろう?」

「俺は真守さんが脱いだから合わせて脱いだんや」


俺、白金さんが同世代の年上をさん付けで呼んでんの、初めて聞いた。

しかし二人とも汗かいてない(メイク崩れてない)ことから、全く本気出してない。まだ試合を始めたばかりだったみたいだ。

真守さんが足の裏をタオルで拭いてから、再び靴下とブーツを履く。


「ほら、私が審判やるから、さっさとコートに入った」


俺たちに背中を向けて、真守さんはさっさと審判台に上ってった。


「橘さんもラケット」

「ああ、すまない」


白金さんが持っていたラケットを橘さんに渡す。

ちなみにまだ白金さんは靴履いてない。


「サーブは橘さんからでいいっスよ」


互いにコートに入って位置につく。

橘さんの手からボールが離れた。



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