コート裏の嘆願
<蒼也視点>
屋内テニスコートを出てそれぞれ別方向に別れて探すことになった。
しかし柳生先輩こと直紀先輩は、髪の色と逆光眼鏡で正体がバレかねないので、仁王副部長ことマサキ先輩が直紀先輩にメイクしてから探すらしい。
直紀先輩は女顔がコンプレックスらしい。
柳先輩たちほどでもないのに。
柳先輩たちことハル先輩とシラオ先輩は「双子だと知られると楽しみが減るから」、という理由で別行動するらしい。怖いなぁ。
幸村部長ことミコト先輩はとりあえず先に見通しの悪い屋内を探すとか言ってた。
そして俺は師匠こと源ちゃん先輩(おっと、俺が師匠にちゃん付けすると怒られる)と行動を共にしている。
理由は一つ。
「師匠」
「なんだ、蒼也」
「さっきから景色が変わらないのは気のせいっスかね」
「気のせいではないのか?」
師匠は壊滅的な方向音痴である。
彼が率先して前に進むと、道程は違えど必ずどこかで同じ場所を廻ってしまう。
彼はまだ気づいていないが、既に屋内テニスコート近くの同じところを三周している。
師匠を一人にしたらテニスコートに帰ってこない危険性がある。
故に俺は師匠についていく。
しかしずっと同じ場所しか捜さない訳にはいかないから、あと三周しそうになったら、俺が先に歩こう。
そう思った矢先。
樹の影に隠れた曲がり角の向こうで、思わぬ人たちに出会してしまった。
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