お互い初めて同士で、お互い痛い思いした。……はずなのに。


「風花〜」

「情けない声出すなや」


叔父さんが彼女さんと旅行や、彼女さん家にお泊まりする度にこれだ。
どうやら叔父さん自らお泊まりの情報をリークしているらしい。

お土産渡す際に会った時は、中学の頃から変わらずの様子だったのに。
いつの間に叔父さんとそこまで仲良くなったんだ。


「叔父さんが留守の度に家の押し掛けないでよ」

「留守やから来てるんや。オジサンのお墨付きやで」


「『一人で寂しないよう、彼氏君が側にいたって』って言われてん」と。

私は小さい子どもか。
……身体は小柄だけども。

リビングのソファに並んで座る二人。
警戒してひとつ距離を置く。

彼は目を見開いたものの、その距離を詰めては来ない。


「傍におるのもイヤなん?」

「それはイヤじゃない」


捨てられた仔犬みたいな目で見ないでよ。


「セックスは?」


なんか、金太郎の口からその言葉が出てくるのがイヤだ。


「痛いから、まだしばらくはやりたくない」

「大丈夫! 二回目からは痛ないって聞いたんや」


誰だ。彼にそんな知識を与えている人間は。
白石さんか、はたまた財前さんか、……謙也さんは多分ないな。

金太郎の真っ直ぐな目を見ていられなくて、俯いた。


「でも痛かもしれないからイヤ」

「でも痛いだけやなかったやろ」


確かに痛いだけではなかったけど。


「……怖い」


最後のあれは快楽というより、恐怖に近い。


「怖いんよ、痛いとか苦しいとかより、自分の体じゃないみたいで、なんもわかんなくて、目の前真っ白になって金太郎までわかんなくなって」


白い海に放り出されて、もがこうにも体に力が入らない。

その瞬間、何も考えられなくて、金太郎に触れているかも、そばにいることもわからない。


「金太郎おるはずなのに、まるでひとりぼっち」


今はまだ、その思いをしたくない。



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