叔父の転勤があったら私はいつまた引っ越すかもわからない。
卒業式前日(モテるのは知ってるから当日は人だかりができると予想できた)に、テニスコートで出会した彼に告白した。
快諾をもらって、それ以来のお付き合いだけど、正直、妹の延長線上のいる感じが否めない。
結局、叔父の転勤もなく、彼と同じ高校に進み、同じように男テニのマネージャーになった私。
手を繋がれたり(理由は大体たこ焼き屋へ急かされて)、抱きつかれたり(私の仕事中にかまってほしいとき)はするけど、それ以上がない。
金太郎とは三年目の付き合いである。
「金太郎」
「なんや風花」
部活が終わって、一緒に下校中。
「明日、土曜日やんか」
「おん」
「日曜日、部活休みやんか」
「おん」
「この土日でな、叔父さんが旅行行くんよ」
「へぇ、どこなん?」
「訊いてない。お土産があったらそれでわかると思う。お土産食べ物やったら金太郎にもあげる」
「おおきに!」
「それでね」
「おん」
「明日、家に泊まりにこない?」
「……ええの?」
「うん」
お土産話で笑顔になった彼は、たった一言で真剣な顔になった。
「ホンマに、ええんか」
「うん。……意識してくれてるの?」
「そら、意識してまうやろ」
「ははっ、顔赤い」
「笑い事ちゃうやろ。真面目に訊いてんのに」
「ごめんごめん」
妹の延長線上ではなかったらしい。
家まで送り届けてもらって、「また明日ね」と手を振る。
彼は「おん、また明日!」と大きく腕を振って帰っていった。
汗がなくても、彼はキラキラして見えた。
明日の晩、私は初めてを捧げます。
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