本当はわかってるんだ。

もしかしたら痛くないかもしれない。
ひとりぼっちにならないかもしれない。
けれどそんな不確定な不安に怯えてる。

今の私に足りないのは勇気だ。


肩を掴まれて、頬に手を添えられ、向き直させられた。
顔を逸らせない。


「……ワイは」


さっきとは違う沈んだ声。

逸らしていた視線を向けて見たら、あの時みたいに眉を寄せて、目を細めていた。

真っ直ぐ交わる視線を再び逸らそうとは思わなかった。


「ワイには、そのひとりぼっちって感じわからへんけど、そんな思いさせたかったんやないんや」


そんな顔させたい訳じゃないのに。


「痛い思いさせたかったんやない」


金太郎だって痛い思いしてた。


「泣かせたかった訳やない」


金太郎だって泣いていた。


「ワイだけ気持ち良うなりたかったんやない……」


金太郎は、気持ちよかったって言えるの?
終わっても尚、泣き続けていたのに。


「ごめんな。たぶん、ワイ、独りよがりになっとった」

「違う、それは絶対違うよ」


痛い思いしたかった訳じゃない。
泣きたかった訳じゃない。
私だって、ただ、繋がりたかっただけなんだ。


「痛い思いするって、わかっていたとしても、金太郎とならいつかはひとつになりたいと願ってたはずだから」


金太郎は、あの苦痛をわかっていたとしても、繋がりたいと願ってくれただろうか。

独りよがりなのは、きっと私だ。


「ワイはな、痛い思いするってわかっとったとしても、また初めて同じくらい痛い思いしても、風花とやったらひとつになりたいって思うてる」


核心をつくような言葉が返ってきて、心を読まれたかと思った。

胸がきゅんっとして、目の奥がじーんっと熱くなる。


「せやから、こうして毎度オジサンの情報利用して、押し掛けとるんや」


顔を寄せられて、思わず目を閉じたら瞼にキスされた。

唇が離れて目を開けたら、体ひとつ分空いた距離を詰めて身を寄せる。

嬉しそうな顔をする彼に、そのままぎゅっと抱き締められる。

無遠慮なようで彼なりに力加減している、このちょっと苦しいくらいの強さが、いつもの彼らしい抱きつき方だ。

胸に頭を預ける。


「今度は絶対、ひとりぼっちにせえへんから」


私は彼の腕の中で頷いて、背中に腕を回すことで応えた。



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