「誰でもいいから愚痴聞いてほしかったのと、自棄食いしたかったので、貴方を利用させていただきました」


「ごちそうさまです」と言って彼女は席を立つ。奢らされると思いきや、彼女は伝票を手にした。


「ナンパした相手がこんな見た目不相応な小娘でがっかりなさったでしょう。お詫びにコーヒーのお代払って退散します」


あれ?ナンパだと思われてるのか?
今思えば、俺の行動は確かにナンパとしか思えない。もうこの際、ナンパでも構わない。

俺は立ち去ろうとする彼女の腕を掴んだ。
反射的に彼女が振り返る。


「見た目とギャップありすぎても構わないし、愚痴だって聞いてやる。どんな貴女でも受け入れる。だから、これからも歌を聞かせてくれないか」


唖然と瞬きを繰り返す彼女。涙も引っ込んだようだ。最後と言わんばかりに盛大に鼻をすすって、彼女ははにかんだ。


「弱ってる小娘捕まえて、ずるいひと」

「う、すみません……」


思わず頭を下げた。


「……また恋してもいいかなって、思っちゃうじゃない」


承諾とも取れる言葉に顔を上げると、彼女はまだ笑っていた。


この日、見た目不相応な年上の恋人ができた。






連絡先を交換してアドレス帳を確認した二人。


「え、中学生?」

「は、高校生?」


実は二人とも立海生でした。



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