母が男を連れ込めば、私は外に出るしかなかった。

その行動はもう何年と続いており、日常に染み込んでいる。

しかし子どもが深夜、外に出ていることは法律上違法であるし、危険であることもわかっている。

人目を憚るものの、時におっさんから声を掛けられ、時に喧嘩を吹っ掛けられる。

上手くかわせずに、時に実力行使で追い払い、時に喧嘩を買い、時に逃走し、夜を彷徨い続けていた。


しかし今日は分が悪過ぎた。

残念ながら喧嘩は強くない。

相手は男、しかも一対三で迫ってきた。
一人目は身ぐるみ剥がされる前に股間を蹴り、二人目は足掛けて倒してから踏みつけ、三人目は流石にもう同じ術は効かず、身ぐるみ剥がされてる最中に隙を見て蹴ってやった。


殴られた腹や頬が痛む。

私、これでも女だし、中学生だ。
顔に傷ついたら見られたくないし、学校に行けなくなる。

地面に揉んどり打つ男たちを思い出してせせら笑う。
良い気味だ。

乱れた服を直しながら、できるだけその場から遠ざかろうと足を速める。


残暑も過ぎ、頬を撫でる夜の風が肌寒い。
その上薄着だ。
何か羽織って出ればよかった。


「寒い……」


早く、夜が明けてくれ。

運よく誰もいなかった公園の、小さなドーム状の遊具の中に引きこもって、夜が明けるのを待った。



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