あれから2ヶ月が過ぎた。
あの日のことが嘘みたいに、私と橘の間には何もない。
そもそも私達はクラスが違うのだから、会うとしても精是、廊下ですれ違うくらい。
私から橘に話しかけることはないし、橘もあの日のことは口外していないようだった。
家に帰り、玄関のドアを静かに開けば男物の靴があった。
音を立てずに、二人がいるであろうリビングの死角を通り、脱衣場で着替えてまた家を出る。
そして今日も、私は夜を彷徨う。
日の沈んだ空に息を吐けば、街の灯りに照らされて白くなっているのが見える。
もうすぐ冬至だ。随分と夜が長くなった。
コンビニで時間を潰そう。
10、11時以降18歳未満は入店お断りとか書いてる店が多いから、長居はできないが。
小学校低学年の頃には24時間営業のスーパーのトイレで一夜を明かそうとしたが、2、3回バレて警察や児童相談所の世話になったこともある。
コンビニはもう目と鼻の先だ。
しかし、コンビニのガラス張りの壁の向こうに、見覚えのある金髪の頭が見え隠れしている。
このまま店に入って見つかれば、今度こそ深夜徘徊の件を言及されるのだろうか。
橘はまだ私に気づいていないようだ。
気づかれぬうちに、と私は踵を返した。
「よう、嬢ちゃん」
最悪だ。
目の前にはあの日襲ってきて、最初にのした男が立っていた。
「あの時は世話になったな」
後ろからも足音。
辺りを見回せば、進退路を断つように、あの日の三人の男達が私を囲んでいた。
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