濯ぎ終えた妹さんが立ち上がりこちらを向いたので、思わず湯船の端に寄る。
「お邪魔します」
「ど、どうぞ」
湯船に入ってくる妹さん。
浴槽の中、二人で向かい合って体育座り。
「突然、乱入してごめんなさい」
「いや、こちらこそ、急にお邪魔することになって」
沈黙。
目を逸らすことなく、じっと私を見つめる妹さん。
私は俯く。
チラッと見ると目が合って、妹さんがクスクスと笑う。
「でも、驚いた」
「?」
「お兄ちゃんが女の人連れて来て、泊めてほしいなんて」
再び沈黙。
「理由、聞かないの?」
「聞かない。話せないような事情があるんでしょう?」
所々にうっすらと残る、過去の傷痕。
妹さんが人差し指でなぞる。
「ちょ、」
声を上げたら、彼女はニヤリと笑みを浮かべた。
「よいではないか、よいではないか」
「よくない!!」
お湯を掛けたら掛け返される。
しばらくふざけていたら、頭がぼうっとしてきた。
こんな長湯は初めてだ。
「杏さん」
確か、さっき橘がそう呼んでいた。
「ん、なに?」
「上がって、いい?」
「えー。まだ話したい」
「逆上せる」
「じゃあ、上がってから私の部屋でパジャマパーティーしましょう! どうせ私の部屋で寝るんだし」
……そうか、杏さんの友達という設定だった。
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