コンビニの近くから、人気のない場所まで無理矢理引き連れられた。
前回同様、股間を狙うが、もう同じ手は通じないらしい。
蹴り上げた足を掴まれ、軸足を払われて後ろに倒れる。
あまりにも分が悪い。
今回ばかりは助けを呼ぼうと、思い浮かんだのは、金髪。
思考から追い出そうと頭を振った。
私と同じく彼は中3で、受験生なんだ。
巻き込むべきではない。
「今回はやけに大人しいな」
「大人しいふりして、また蹴り食らわそうって魂胆だろ」
「ちげぇねぇ」
掴まれたままの片足。
もう片方の足を蹴り上げたが、こちらもアッサリ捕まってしまった。
迫る男たち。
ぎゅっと瞼を閉じ、とにかく大声で助けを呼ぼうと息を吸い込んだ。
「お前たち、そこで何をしている!!」
誰かの声が聞こえて、息が詰まる。
再び瞼を上げ、視界に飛び込んで来たのは、コンビニ袋。
横から飛んできたコンビニ袋が、男の側頭部にヒットする。
男の手が離れ、足が自由になる。
その場に崩れ落ちる男と共に、鈍い音を立てて落ちた袋の中には、ペットボトル飲料が入っているようだ。
倒れた男以外、袋が飛んできた方を見た。
見覚えのある金髪。
「てめぇ、何者だ!!」
男の一人が叫ぶ。
実に安っぽい悪役の台詞だ。
倒れていた男がゆっくり起き上がる。
「少なくとも、」
橘は私を一瞥すると、男たちを睨み付ける。
起き上がった男が橘に向かっていく。
「惚れた女が傷増やして喜ぶ男じゃなか」
時が止まったかと思った。
目を見開く私。殴りかかる男。
軽々と拳を避け、その腕を掴み、捻り上げる橘。
空いている方の手で腹に一発入れると、倒れる男の腕を横に放った。
「腕っぷしには自信あるけん、覚悟しなっせ」
関節を鳴らす橘。
男どもは顔を青くし、倒れている仲間を置いて逃げ出した。
倒れていた男も、よろめきながらも立ち上がり駆け出した。
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