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〈side.R〉
『本当のことを言っているなら、声をあらげる必要はないんじゃないですか』
違うよ、長太郎。
本当のこと言ってても、耳を傾けてもらえないことを怖れて声をあらげてしまうんだよ。
……今なら、冷静に理屈付けて説明できるのに。
あの時、信じてくれていると思っていた仲間から、その信頼が揺らいでいると知って、私の思考回路は上手く働かなくなってしまった。
余計に疑念を抱かせてしまっただろうか。
私はただ「信じて」としか言い返せなかった。
結局、何も説明しないまま転校した私は、逃げたと思われているのだろうか。
日誌を書き終えて机にトンッと立てる。
ふと入口を見ると、なまえちゃんが戻ってきたところだった。
置きっぱなしにしていた鞄を取りにきたのだろう。
「瑠依ちゃん」
なまえちゃんは後ろの自分の机ではなく、私の目の前に来た。
パタンッと倒れた日誌。
「先に謝っとく。ごめん」
「な、なに?」
あまりの彼女の剣幕に、座ってなかったら後退りしているところだ。
なまえちゃんは机に両手をついた。
「聞かせてほしいの。瑠依ちゃんの無実を証明できる何か。何でもいい。些細なことでもいい。手がかりがほしい」
「なまえちゃん、」
証明できる何かがあったなら、自分でなんとかしてるよ。
私は言葉を飲み込んだ。
これはただの八つ当たりだ。
不思議に首を傾げるなまえちゃん。
ブレザーのポケットに手をいれて取り出したのは、未練がましく持っていたICレコーダー。
「彼女にバレないように、証拠を残そうとしたの。でもダメだった。彼女、最初の一回目以来、何も仕掛けてこなかった。私が虐めてない、嵌められた証拠はない」
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