3/3

〈side.Y〉


さっきの呟きは聞こえていただろうか。
聞こえていたとしても、みょうじは聞こえなかったフリをするだろうけど。

彼女が本当に臆病なら、面と向かって言わない限り受け取らないだろう。

俺も臆病だから、面と向かって言えない。

言えたとしても、受け取ってもらえたとしても、きっと彼女の想いと俺の想いは、同じものになることはない。

俺の言葉ひとつで、はたして彼女の俺に対する感情は変わるのだろうか。

……きっと変わらない。
たぶん、彼女は変化を望まない。

正直、俺も今の友人という関係が心地いい。
変わらなくてもいいかなと思うくらい。

みょうじに対する感情が、友愛なのか恋愛なのか、自分でもよくわからない。

はっきりとわかるように、想いが目に見えたらいいのに。


『知らないよ』
『テニスと音楽は違うから』
『音楽は他者評価だから。聴いた側が、思い思いにその価値を決める。それは人それぞれ』
『テニスや、他のスポーツみたいに、結果が目に見えてわかるものじゃない。誰が見ても結果が変わらないものじゃないの』


あの娘は元気だろうか。


喧嘩別れした女の子を思い出して、空を仰いだ。



- 3/3 -

[*前] | [次#]

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -