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「ていっ」
「あだっ」


幸村ほったらかして考えてたら、軽く頭にチョップくらった。
続いて頬を伸ばされる。


「無鉄砲に首突っ込んで行けよ。いつもみたいに」


あれ? 私後先考えずに行動したことあったっけ?
……思い出せないけど、結構ある気がする。

びよ〜ん。ぺちっ。

気が済んだのか、指を離され両頬を軽く叩かれ、また元に戻った。


「一人で乗り込む勇気なんてないです」
「今まで勇気がどうこうなんて考えて行動してたことあるの? 無いよね。考えると同時に喋ってるか、考えるより先に手が出るかだもんね」
「否定させろ。せめて否定できる隙を与えろ」
「どうせ事実だから否定できないだろ。俺がそんな無駄なことすると思うかい?」
「思わない」


幸村の言うことはムカつくことに正論だ。

眉間に皺がよる。
真田みたいなったらどうしてくれる。


「ふふ、」


唐突に幸村が笑いを溢した。


「なんなの、どうしたの?」
「いや、みょうじが怒れるくらいの元気はあるみたいで、ちょっと安心した」


ここ最近表情変わらないくらい元気無さそうだったから。


私が余程不機嫌な顔をしていたのだろう。幸村は笑う。

幸村の笑い声に、毒気を抜かれた。


「なんか幸村のみょうじなまえ像聞いてたら、考えるのが馬鹿らしくなった」
「ふふ、その方がお前らしいよ」
「明日の放課後、乗り込んでみる」


なるようになるさ。
それが私という存在らしいから。


「どこに乗り込むつもりかは知らないけど、頑張れ」


頭を撫でられる。
頭に置かれた手をやんわり払った。


「そんな風にするから、女の子たちが勘違いするのに」
「ふふ、みょうじはそんな女の子じゃないでしょ」
「まあね」


そろそろ瑠依ちゃんも日直の仕事が終わってる頃だろう。


「それじゃ、行くね」


私は立ち上がり、教室へ向かう。


「……勘違いしてくれればいいのに」


後ろから聞こえてきた、冗談とも願望とも、非難とも取れる呟き。

幸村がどんな顔していたのかは知らない。

その呟きは聞いてないことにする。



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