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元の世界にいた頃、大学の心理学の授業を思い出す。

講義の議題は『攻撃すること』。

人間を攻撃的にする要因はいくつかあるらしい。

フラストレーション。
心理状態と手段が揃うことで攻撃にいたるという手がかり説。
モデリング。
本能説。
役割や匿名による没個性化。

当時の教授いわく、心理学の実験ってえげつないのが多いらしい。

講義内で紹介された数ある実験の中で、最も印象に残っているのが、ジンバルドーの監獄実験だ。
他の実験に比べて、一見えげつないとは思わなかったが。

仕組みは監視役と囚人役を演じるだけの単純なもの。
だが、監視役の度を過ぎた罰則行為に、囚人役の何人かが精神的異状を来したため、実験は中止された。

瑠依ちゃんが新しいマネージャーを虐める。
その噂の真偽はともかくとして、罰するという役割を得たこと、匿名性があることが、集団的いじめを引き起こす理由になったのだと思う。

奴らにとって、攻撃対象は誰でも良かったに違いない。
ことの元凶になったマネージャーも、その他大勢も、犠牲になったもののことなんてお構い無しにのうのうと生きているのだろう。

夢小説なら、ここでヒロインがイジメが起きてる学校に乗り込むのだろう。

……私は、どうすべきだろう。


「大の字で寝転んで、なに考え込んでるの?」
「幸村……」


幸村が現れた。

そうよね。幸村が屋上庭園の世話してるんだもんね。


「足閉じたら? パンツ見えるかもしれないよ」
「幸村は私のパンツなんて興味ないから見ないでしょ」


かく言いつつも、言われた通り足を閉じる。

上体を起こして幸村を見上げる。
その目線を下げるように、幸村が隣に座り込む。


「何があったかは知らないけど、うじうじしてるなんてみょうじらしくないじゃないか」
「私らしいって何さ」
「向こう見ずの無鉄砲。白昼堂々と妄想を垂れ流しにしている。かと思いきや羞恥心はあるみたいで、何かしらやらかした後は顔がすぐ真っ赤になる。賢いようで短絡的で楽天的」


それからそれから、湧いてくる湧いてくる。

終いに「まだ聞きたい?」ときた。
もう聞きたくない。


「ほら、怯えて動かないでいるなんて、お前らしくないだろう?」


でもね幸村、仕方ないじゃないか。
ここが、今の私にとっての現実である以上、臆病にだってなるものだ。

立海生の私が一人で氷帝に乗り込む勇気はない。

そっとしておくべきだと言い訳しておいて、でも納得いかなくて。だけど結局は怖くて。

何が最善なのか。
根本的解決策なんて知らない。



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