9 弛緩しきった体は中々言うことを聞かず、ヒュウガに支えられるがまま少しの間彼の香りを楽しんだ。 「ところでコナツ、オレとしてはこのままベッドに行きたいんだけど」 「……明日も仕事があるので駄目です」 うっとりとするような心地よい感覚に囚われながら、徐々に覚醒していく思考に意識が追いつく。 熱に浮かされた体を冷やすように紡がれるヒュウガの言葉に、コナツは再び叫びたくなるような行き場のない情念に塗り替えられていく。 「いいじゃん、オレ最近仕事頑張ってるからさ」 (少佐……貴方は気付いてますか?) 「ねえ、ご褒美くらい貰ってもいいよね」 (貴方は……) ――テイト君がいる時だけは、絶対に執務室を抜け出さないんですよ? 虚しくなるだけのヒュウガの声を聴きながら、コナツはそっと体を離した。 すでに飽きられているであろう己は、彼を問い詰めてしまえばいいのか、無様に縋り付いてしまえばいいのか、わからない。 ここで素直に想いを口にすることができたなら、きっと可愛げもあるはずなのに。ちっぽけなプライドが邪魔をする。 [*prev] | [next#] (←) |