「……そう」
「はい、だからコナツさんこそどうぞ自分のお仕事を……」
「だってさ☆テイト君もそう言ってくれてるし、コナツは書類の提出にでも行ってきてよ」

二人の会話を遮って声を出したヒュウガは、押し付けるようにしてコナツに書類を渡す。
その態度はまるでコナツを執務室から追い出そうとしているようで、彼の中でずっと否定しつづけていた事実を突き付けられたような錯覚−−否、現実をようやく理解したような気がした。


−−私は、とっくに飽きられている。

艶やかな黒髪に鮮やかな翡翠の瞳、そして少年独特の幼い整った容姿は、おそらくヒュウガの好みだ。何よりミカエルの瞳の操者という唯一無二の存在価値は、どれもコナツが持ち得ないもの。

(私よりも素直で実力があって“綺麗“……なら、もう無理かな)

勝ち目が無いとわかっている筈なのに、つい彼と自分を比較してヒュウガの気を引けそうな部分を探す己の思考に、吐き気がしそうだ。

いつからこんな、未練がましくなったのか。
自分がいて、その他大勢がいて。それで良かった筈なのに。


(少佐のせいだ)

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