嘘つきの愛し方


「テイト君の目ってさ、綺麗だよね」

そんな声が響いたのは、魑魅魍魎・阿鼻叫喚・地獄絵図など様々な称号を不本意にも頂いているブラックホークの執務室。黒法術の使い手のみで構成されているからなのか、はたまた日夜聞こえる鞭のしなる音と悲鳴のせいなのか、妙に物騒な言葉が並ぶそこだが、実際はなんてことない普通の部署。

それこそ、先ほど発せられた間抜けな言葉を日に一回は聞く程度には平和なところだ。

「……はい?」

今日も今日とて大量に増やされた書類を抱えていた彼――テイトは、向けられた言葉にこれでもかというほど顔を顰めてから声の主の方へと顔を向けた。リンゴ飴を片手に持ちながらとは思えないほど甘いセリフを口走った声の主は、振り向いたテイトの顔に自分の顔をぐぐっと近づけて再び声を発した。

「うん、いいね。綺麗な緑色。宝石みたい」
「……あの、近いです」



口づけ出来るのではないかと思うほど近い距離に、テイトは内心ハラハラしながらヒュウガの顔を押し退けた。
誰もいない場所でなら彼のおふざけに付き合わないでもないが、如何せんここは泣く子も失神するブラックホーク執務室。当然人目がある上に、そもそも職務中だ。

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