Ωverse

約8000字

勢いで書き終えたオメガバースです。オバ出、轟出、勝デクですが今回は勝デク要素強めです。
ボロボロ文ですが寛容な気持ちでお読みください!

Ω
verse


*個性の出現の代わりにバース性が消えていきます

*個性が出現していない人は昔の先祖の隔世遺伝のようなもので個性がない代わりにバース性を持っている人が多いです

*つまり一割二割ほどバース性を持つ無個性が存在しますがα性やΩ性が発現する可能性は昔からそもそも低かったのでほとんどがβです

*個性を持っている人でも昔の先祖にα種が多い家系だったら稀にα種として産まれて来る場合もあります、個性も強い場合が多いです

*この世界ではα種が自分で起こすヒートがないので周りにΩがいないと発情も起きず、「ただ個性も頭脳も容姿も全て優秀はスーパーマン」として認識されるだけでα種と確認が取れないまま生涯を終えることが多いです、Ω種に会わないと自分がα種かわからない感じです

*Ω種は無個性に限定され、無個性の中からさらに絞り込まれた存在です

*なので現在Ω性を持っている人は都市伝説並に少ないです

上のことを踏まえてお読みください






「..っふ、んぐ、...はぁ、な、なにこれ...」


それは突然にやってきた。
ぐわんぐわんと何も考えられないくらいに揺れる脳内。おぼつかない手足が必死に上体を立て直そうとする。
指の先から髪の毛の一本まで敏感で、壁に手をつくだけでも奥から押しあがる快感が麻薬のように漬けてくる。
ろくに歩けない状態からゆっくりと壁に全体をもたれかからせて自分の部屋へと戻っていく。あと3m。2m。


(だ、誰も、来ないでくれ)


うまくドアノブが掴めなくて、ガチャンガチャンと荒々しく鳴るだけなので、仕方なく力の入らない手をドアノブにかけ、それから腕に体重をかけることでなんとか回した。

PM23:50分。何故か体がだるくてキッチンに水を飲みに行った矢先だった。
今日は午後からの実技訓練がかなりしんどくて、みんな就寝していた。それだけが不幸中の幸いと言えるだろう。頬も赤く目からも口からも体液が溢れ吐く息も熱がこもっていて、いまの状態は周りの人に見られるには、かなり羞恥を伴う状態だと把握していた。

なんとか辿り着いたベットに倒れかかって熱い息を整えようとする。さっきまで移動に神経を集中させていた出久は、今になって自分の陰茎に熱が集中して盛り上がっていることに気付き、嘘だろ、と戦慄した。
こんなことはこれまで一度もなかった。
明らかに異常事態な身体に危機感を覚えるが、身体の熱が収まってくれなくて自然に手が股に伸びる。


(仕方ないんだ、ある程度落ちつかせないと、)


そう感じた出久はゆっくりと衣服の上からそ
れをさすった。


「ッ〜〜〜〜、!!?あっ、!?」


と同時に来る、これまで体験したことのない電撃的快感。思わず身体を弓のようにしならせて快感を逃がそうとする。
あ、あ、と勝手に名残惜しそうな声を出しながらそこから手を離し、ズボンとパンツを一気に引き下げる。ぷるんと小ぶりな性器にぴとっと人差し指をくっつけるだけで、先走りがどろどろと溢れ、もっと刺激を欲しがる。


(いやだ、これ、も、止まんないよぉ、)


かすかに残ったぼろぼろの理性で漏れ出る声を隣の部屋へ聞かせないように枕に顔を押し付けて、無我夢中で何度も精が出るまでソレをこすり続けた。








「なんか昨日の夜、不意に目が覚めちゃってさー、急にムラムラしてくんの!!なんつーの、匂い?ふんわりだけど、なんかめっちゃクる匂いが部屋ん中きたんだよ!!」
「それオイラもだ!!なんでかわかんねーけど、昨日はやばかった!!シコる手ぇ止まんなかったもん!」
「やめてよ上鳴、峰田。朝ごはん中だってんのに」


次の日の朝。朝食を摂る1-Aのメンバーは、上鳴や峰田の朝っぱらからの猥談を疎ましく思いながら、その会話に微かな共感を持っていた。
確かに昨日は深夜に目を覚ましてしまった。眠くないわけではなかったのだが、なんていうか、上鳴が言うような「匂い」を確かに自分も感じたのだ。
どこか甘く焦れったくて、匂いの根源を探し出して征服したいという欲が出て来るような、媚薬的なそれ。


「ほら!!みんなもちょっとわかるって顔してんじゃねーか!んで、みんなもその匂いのせいで夜中起きちまったんだろ?やっぱり俺の夢じゃなかった」
「待ってくれ、上鳴くん。あの匂いは君の部屋の方から感じた気がするぞ。僕としては、君がなにか変なものを焚いているのかと思っていたのだが」
「いやいやいや、俺じゃねーって!!おれはどちらかというと下の階の方から香りが昇ってきた感じがしたけど!!」
「あ、オイラはなんか横から匂ってきた気がする」


飯田は上鳴のせいだと思っていたらしいが、上鳴は下の階、つまり二階から匂ってきたという。峰田は横から。そして峰田は二階の一番奥の部屋だ。隣には緑谷の部屋しかない。


「と、いうことは...」
「ふぅん、緑谷って結構ムッツリなんだな」
「いや絶対それはないでしょ!女子の方にも匂ってきたんだろ?もしなんかそういうお香みたいなの焚いてたとしても、緑谷がみんなにバレるくらいにバンバン焚くってのは考えられてねーよ!」


他の男子達もわいわいと昨日の謎の目覚めと匂いの話題で盛り上がり始めるが、今すぐに確かめる術はない。何せ、緑谷は皆が起きて来る頃にはもう朝食を摂り終え、寮を出ていたのだから。


「ま、まぁ確かに昨日は目ぇさめちゃったかな、すぐ寝たけど。でも、デクくんがそういうの...ってかんがえられないかな〜...」
「まあ確かにそうね。とりあえず今日、本人に聞いてみるしか確かめる方法はなさそうだわね」
「まじで緑谷だったらどうするー!!?」


女子までこの話題を始め緑谷が話の中でこねくり回され、さらにまた違った、緑谷の性癖はなんだろとかそういう「緑谷トーク」に会話がもつれこんでいっている。
明らかに朝にする話題ではない上あることないこと言われている緑谷がかわいそうになってくるが、意外にもこの話題を止めようとしたのは他でもない爆豪だった。


「さっきからうっせーんだよザワザワと!!!」


しんと静まり返った寮内。チッと舌打ちをした爆豪が、それ以上なにも言わずにどこかに行ってしまった。
悪ノリしすぎたということで少しの間空間に気まずさが残ったが、その後ぽつぽつと誰かが話し始め、さっきの事が何事もなかったかのように、皆違う話題で盛り上がり始める。


(あれ、さっきの爆豪くんのってもしかして、変な疑いがかけられてるデクくんをまもった感じ、だったのかな...?)


麗日だけはこんなことを少しかんがえた後、まあどうでもいっかとまた蛙吹達と話に花を咲かせ始めた。








齢15歳。勝己も出久も雄英への進学を決めた三月終わりごろ、勝己は引子に呼び出された。
呼び出された理由を持ち合わせていなかった勝己は、引子から聞かされた話に個性も使わず爆発してしまうくらい驚かされる。


「今日は勝己くんに、お願いがあるの。よければ聞くだけでいいから聞いてほしい。」
「...ッス」
「勝己くん。勝己くんは、出久が無個性なのは知ってるでしょ」
「当然だ、です。雄英に受かったのもまぐれですし、いやきっと書類の間違いだとも思ってマス」


出久の実の母にも慣れない敬語でしかし遠慮なく自分の意見を言って来る勝己に、引子は「改まらなくていいのよ」と微笑む。


「そう。だからね、出久には多分だけど、バース性が出て来るかもしれないのよ。知ってるでしょ?Ωとかαとか...」
「...え?バース性?」


その存在は知っている。産まれながらにして決まる優秀種と劣等種。昔には6つの性別があったこと。しかしそれは昔の話で、個性の出現とともに性別は男女の2つだけに絞られたと少しだけ学校で習った。


「無個性ってね、言うなれば隔世遺伝って感じで古い先祖の血が何故か今濃く出てしまった結果らしいのよ。昔は個性がなかったから。だからその分、昔あったバース性が蘇って来る可能性があるの。….バース性が蘇ったっていってもね、昔だって普通種のβが八割って言われてて、もしβだったらなにも支障はきたさない、普通に暮らせる。でも、その、」
「αやΩの可能性もあると」
「そ、そうなの...ほら、あの子って言っちゃえば鈍臭いじゃない?だからもしかしたらーって...」


引子は出久がΩ種ではないかと疑っているのだ、と勝己は悟った。
鈍臭いしすぐ泣くし運動もできない。確かにあいつにバース性を付けるとしたらΩな気がする。しかし、


「現代でΩ...αは気づいてないだけで割といるって聞くが...」


Ωなんてそんなの、見たことがない。テレビにも映らない。存在そのものがこれまでにないのだ。


「大丈夫だろ。そんな絶滅種みたいな存在、デ、出久がなるわけねーよ。」
「まあ、大丈夫だろうって思うんだけど...二人とも、同じ高校に入学することになったじゃない?だから、もし何かあったら、出久を助けてあげてほしいの。」
「...え、いや、それは...」


こっちは出久をいじめてきた歴史があった。今になって助けるとか、そんなのは逆に出久に申し訳がたたない。一応、自分がやってきた事の悪さはわかっているのだ。


「お願い...もし、あの子になにかあったら...望まない未来が産まれたとしたら...私は、あの子に、今度こそなんて声をかけたらいいかわからなくなってしまうの…!!お願い勝己くん、出久を...出久を守っていただけませんか..!!」


...Ωが存在するとしたら大きな混乱を招くだろう。
発情期。それは時にしてβでさえ感じることの出来るフェロモンを分泌し、相手を探す。
確かに存在するが確認出来ていないαがもし近くにいるとしたら、取り返しのつかないことになってから自分はαだったんだと気づくことになるのだろう。
引子が涙ながらに自分を説得する姿に少しだけ同情した。男の息子が孕まされる想像なんて、したくなかったろうに。


「...わかった。もし出久がΩだったら、なんとかする。...ただずっと一緒にいる訳じゃねぇから、保証はしねぇ」
「わかってるわ、一緒にいる時だけでいいから...!ありがとう、勝己くん、ありがとう...!!」


泣いてありがとうを叫ぶ引子にまだ決まった訳じゃねぇだろ、と言いながら席を立つ。
夕暮れの道を歩きながら何故か思い出したのは、4歳ぐらいの頃「デクは俺がいないとダメなんだ」と言っていた自分の満足そうな笑顔だった。









勝己は焦っていた。
あの匂いは正真正銘出久のフェロモンだ。つまり、あいつは絶滅種Ωだったということだ。
夜中目が覚め、異常なほどにバクバクと鳴る心臓にテントを立てる股間。全てを独占したくなる芳醇な香りが肺に入って全身に回っていく。まるで麻薬のようだった。
フェロモンに犯された自分がαなのかと錯覚したが、朝起きたら皆も夜中目を覚ましたということで同じもんかと何故か落胆してしまった。Ωは時にβすら誘惑すると言うから、それなんだろう。

とりあえず出久に自分の体質食事スペースにいないので部屋に行ったり風呂やキッチンも探したが居らず、寮を出たと思われた。
発情期なのになにほっつきあるいてんだこちとらお前を任されてるんだ、とイライラした手付きで選んだ洋食を口にかきこむ。
クラスメイトが昨日の夜のことについて話し合っているのが聴こえて、出久の名前が出て来るのに少し笑えた。

(ハッ、すぐにばれてんじゃねーか)

そういえば出久は二階、共有スペース抜きでは一番下の階なのに皆感じとれたんだな、とふと思う。自分は4階だが、5階までフェロモンは匂ったのだろうか。勝己はチラリ、と五階に部屋を持つ面々を見る。
砂糖や瀬呂はここでみんなと一緒になって昨日のことについて話している。八百万も蛙吹も女子で固まって話しているようだった。ならば、あれを感じ取れたということか。
フェロモンの範囲の広さに驚く。そしてそれと同時にふと、少しの違和感を感じた。

五階のメンツは4人だけじゃなかった。あと一人が見つけられないのだ。
轟焦凍。個性婚で産まれた強力な個性を持つ、クラスで一番恐るべき男。
なぜだか引っかかる。あいつは個性婚の両親から産まれた。
もしその、強い者同士の子供を作り家系を強化する方針が先祖から続くものだとしたら?
もしそれが、バース性があった時代からその方針であったとしたら?
自分の勘ではあるが、轟にはαの血が割と濃く入っている気がするのだ。
此処にはいない出久。共に消えた轟。まだ朝早い。その二人以外のクラスメイトは全員此処にいる。
なんだか悪い予感がする。これも自分の勘ではあるが、やはり自分の勘ほど頼りにできるものはない。
冷や汗が首筋を伝う。親指の爪を噛みたくなるような焦りがジリジリと襲う。


「さっきからうっせーんだよザワザワと!!!」


とりあえずクラスメイトに出久がΩだとバレてはいけない。雄英はすごいやつがゴロゴロいるから、確認できていないαがもう少しいてもおかしくない。興味本位で手を出されたら、なんだかそれは、なんかいやなのだ。それに引子に頼まれた分、じぶんがやれるだけ守らなければ。
しんと静まる食事スペースはこれから自然と「この話はタブーぽい」という空気を汲み取り、違う話に変わってくれるだろう。それを願うのみだ。
とりあえず出久を探しに行かなければ。
もし轟となにかあったら_____。
舌打ちをすると同時に、玄関へと足早に駆けた。





緑谷と轟のエンカウントを危惧している爆豪だが、現在緑谷が会っているのは、当時では到底考えることもできないような人物だった。







朝になってようやく体の火照りが収まった。
意識が切れるギリギリ位まで押し寄せていた理性が、今やっと解放される。


「…頭、冷やそう」


考えられることが出来たのは病院に行くことや誰かに相談することでは無く、大きな木が乱立している校舎の裏側まで行って、誰もいない緑の中でゆっくりこの事態のことを考察しようというものだった。正直に言うと覚醒したばかりの意識は、病院などを思いつくに至らなかったのである。


ざくざくと膝まで伸びる草を無視して歩き続ける。広大な面積を持つ雄英だ、土地の奥の奥まで行くのには時間がかかった。
もうそろそろいいだろう、と雄英の外壁に手をかけて足を止める。
周りを見渡し誰もいないことを確認すると、出久は雑草らを気にせず、体育座りをして考察をしだした。


「真夜中の中急に体が熱くなった、これには様々なことが考えられるけど誰かが操作して、とは考えにくいだろう。雄英はセキュリティが強いし、クラスの皆も男の僕に媚薬を仕込むなんて頭の狂ったことをする人はいない。だとすれば僕自身の体質…これは僕の『個性』なのか?いや、それだったら足の指の関節があるのはおかしい。やっぱり何かの…………」


考えを口に出してしまう癖は治せない。出久は下唇を親指と人差し指でつまみながら、延々と考察を語った。
だんだんと眉間にしわを寄せて、言葉につまる出久。やっぱりあの状態は不可解だ。
しかし“体が火照る”というワードを脳内検索し中学の頃社会で習った差別を思い出して、やっとこの謎を解明する手解きが考えついた。


「まさか…先祖の時代で当たり前だった『オメガバース』…とても教科書の症状と似てる。…それはないか?絶滅してるし…いや僕なら、有りえる…?」


その言葉から五分。なんと出久は自分で『無個性は先祖の血を濃く受け継いだ結果であり、それによって自分に隔世遺伝が起き第二の性別が備わってしまっている』という事実を脳内完成させてしまった。
かなり憶測で突飛な話だが、今はこれしか思い浮かばない。
とりあえず冷静になった思考が“リカバリーガールに相談しに行こう”と言ってきたので、出久は素直に腰を上げた。

この森とも言える敷地内を何の頼りもなく歩き回るのは、出久にとって危険な事だ。
迷うのを恐れて手を雄英の外壁に添えたまま歩き、木の地帯を抜けるまで遠回りする。
と、その頑丈で分厚い雄英の外壁に、小さな黒い門が存在しているのに気付いた。


「なんだこれ…裏門かな?」


雄英のセキュリティなら触れた時点で電流が流れる仕組みになっているかもしれない。
だけど何かと怪しい雰囲気を漂わせているこの門を、好奇心がちょっとだけ触れて開いてみたいと叫んだ。

中指でとん、と軽く触れてみる。
何も指に害は起きなかったので、出久は安心して両手をべったりその扉に付けた。そしてそのまま押してみる。
それには鍵が無かった。こうしてフルカウル等パワーも要らずに簡単に開く事は逆に警戒心が無くて少し恐ろしかったが、六分の恐怖心と四分の好奇心に後押され、門の外を覗いてみる。

そこはただの壁の向こう。
なんでもないのが逆に怖い。
何故こんなに頑丈なセキュリティなのに鍵も力も要らない門なんかあるんだ?
これはもしかしたら、敵による犯行かもしれない。
即刻先生に相談しよう、と門に背を向けたその時だった。


「よぉ、英雄症候群。誰かに言ったら殺すぞ」


出久はザッと大量の汗をその身に降らす。
自分の耳より高い位置から、自分より低く威圧感のある声が聞こえてきたのだ。
本能的に危険を察知し、逃げようとする。
が、脳から信号を出しても足は動かない。



_____この人は、キケンだ。

バクバクと音量の調節が効かない鼓動が、またの異常事態を教えてくれる。
…なんだか、初めて会ったように思えない。
だって、初めて会ったにしては_____


ゆっくりと背中を回した。目線を上げると、驚いたような、歓喜のようなその表情。きっと、僕もそんな顔をしている。


「…うん、めい」



______初めて会ったにしては、この人が愛おしすぎる。




僕はゆっくりと彼の手に自分の手を重ねた。彼はその様子を凝視している。まるで、手を重ねることを出来る事自体が驚くべきことのように。
じっくりその手の様子を眺めた後、僕に視線を絡ませ、そして口を覆う特徴的なペストマスクを外した。

その人の美しさに目を奪われる。光の加減で赤色にも見える髪が風にさらさらと靡いている。長い睫毛と高い鼻は、誰が見たって十人中十人、美形だと答えるだろう。
彼はその顔で、まるで出会いに祝福をするように言った。


「___お前、名は?」







運命は惹かれあう。
何処にいたって、まるで半身を探すように歩き回る。

誰が想像出来ただろうか。
後に一部の雄英生徒、勿論出久も参加する大規模な死穢八斎會への壊理ちゃん救出作戦の大ボスが彼である事を。
そしてその存在が、後に“平和の象徴”と呼ばれる緑谷出久の運命の番である事を。




やっと緑谷の元に辿り着いた轟は、その一部始終をずっと見ていた。
目を逸らさず。体を影に隠すこともせず。
なのに向こうはお互いのことにいっぱいいっぱいなようで、ぴくりとも瞳を自分の方に向けようとしない。

轟が緑谷を追いかけていた理由。
そんなの、真夜中に欲で苦しんだ時から決まっている。直ぐに愛を囁いて受け入れてもらい、そしてその項を噛む為であった。

目の前の現実にただ心の中で悲痛を叫ぶ事しか出来ない。
明らかに“運命の番だ”と雰囲気で語り合う両者。とても幸せそうな顔をしている。

本来は、おまえが来なければ、俺がその立場になっていたのに。
悲痛が憎しみ、憎しみが怒りに変わる。
感情が最終、憤怒に変化したその時には、轟は緑谷の腕を掴んでその場から立ち去っていた。













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