ファーストコンタクト


ぱちん!
自分の鼻提灯が弾ける音で僕は目覚めた。
ぽかぽかとここちのいい並中の屋上でお昼寝するのは、僕もヒバリさんも大好きなんだ。たまにお散歩中に一匹でここへくるとうっかり寝込んでしまうことがある。

温まったアスファルトの上でくわぁと欠伸をすると、僕の目の前に誰かがいた。
「キューーーー!」
「はひ、起こしちゃいましたか」
し、しし知らない女の子だ!!僕は飛び上がって驚いた。
ヒバリが言ってたの。知らない人には付いて行っちゃダメだって。僕はかわいいからユーカイされちゃうよって。
思わず後ずさったけれど、女の子は小首を傾げてキョトンと僕を見つめている。
「迷子のハリネズミさんですか?飼い主さんとはぐれちゃったんですかねぇ」
「キュキュ!クピーッ」(迷子じゃないもん!お昼寝してただけだよっ)
「どうしましょう…困りましたね。ハル、ツナさんを探しに来たんですけどいないですし。一緒に飼い主さんを探しに行きましょうか」
「クピクピ!」(僕は一人で帰れるってば!)
「さ、怖がらなくて大丈夫ですからね」
そう言って女の子は白い手を僕に差し出した。
僕は迷子じゃないし、ヒバリさんのところへ一人で帰れるのに。
一生懸命説明したけれど女の子は聞いてくれなかった。どうしてヒバリさん以外の人間って僕の喋ってることを理解してくれないんだろう。
「一緒に飼い主さんの所へいきましょう?」
太陽みたいにあったかくて優しく微笑む女の子は、悪い人には見えない。
ヒバリさんの顔を思い出したらなんだかすっごく寂しくなってきて、うるうると涙が浮かんできた。
「クピィ……、キュウウゥ」
「泣かなくて大丈夫ですよ。ハルが絶対に飼い主さんを見つけてあげますから!」
女の子は人差し指で僕のおでこをやんわり撫でてくれた。ヒバリさんもこんな風に優しく撫でてくれるんだ。大丈夫だよ、君は強い。だから簡単に泣いちゃダメだって。ヒバリさんの匣アニマルは強くなきゃいけないんだよって。
「ロール、ロール」
空から僕を呼ぶ声が聞こえて見上げると、ヒバードが宙を優雅に舞って僕のすぐ隣へと着地するところだった。
「はひ、ヒバードちゃん!」
「ロール、ムカエニ、キタ。オヤツ、マッテル」
「この子はロールちゃんっていうんですか。ロールちゃん、ヒバードちゃんがお迎えに来てくれたら安心ですねぇ」
女の子は前半はヒバードに、後半は僕に話しかけて「良かったですね」とにっこり笑う。
ヒバードのお友達なら知らない人じゃないよね。ヒバリさんが言ってた「怖い人」じゃないかもしれない。
立ち上がった女の子にヒバードは話しかけた。
「イッショニ、オヤツ、タベル?」
「う〜ん…。とても魅力的なお誘いなんですけど、ハルはこれからツナさんを探しに行かなきゃいけないので。また今度一緒にお茶してくださいね」
「ヤクソク!オヤツ!」
「はい、約束です。ハルの手作りお菓子も持参しますねっ。もちろんロールちゃんの分もご用意しますから」
僕らに手を振った女の子は楽しげにポニーテールを揺らしながら、扉の方へと走り去ってしまった。
「ヒバリ、シンパイ。ロール、カエル」
「キュピ!」(うん!僕もヒバリさんに早く会いたい)
おやつって言われたらなんだかお腹がすいてきて、僕もヒバードと一緒にヒバリさんが待つ応接室へと急ぐことにした。

――笑顔がとってもかわいい女の子。またいつか会えるかな?

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