はろいんぱーてぃー!6


どうしようかと一瞬、雲雀が躊躇していると唐突に会場の扉が開かれた。
「はひ!?皆さんお揃いだったんですか!」
ドアの外にいたメンバーにハルは黒く大きな瞳をまん丸にして驚いたが、なにか焦っているようで雲雀を見つけるとその腕をおもむろに掴んだ。
「ヒバリさん!早く早く、いまから投票が始まっちゃいますよ!」
「だから何…」
「アニマルちゃん対抗ファッションショーですよ!ヒバードちゃんもロールちゃんもキュートで票が割れそうなんです!」
呆気にとられた雲雀はあれよと言う間にハルに引き摺られて、室内へ入ってしまった。
「あーあ、せっかくカッコいい決めポーズ考えてたのになぁ」
「本気だったんだ、山本…」
「うむ、雲雀が抜けたのでは仕方あるまい。俺たちもパーティーに参加しようではないか沢田!」
「そうですねぇ」
アルコバレーノの面々と綱吉たちは、揃って会場に足を踏み入れる。

中で雲雀が暴れているんじゃないかと心配した綱吉だったが、ファッションショーとなる舞台を真剣に眺めていたので意外だなと肩透かしをくらった気分だ。いや期待していた訳ではないが。
雲雀はディーノに近づいて頭を寄せあっていた。雲雀が指差す方向を見て、ディーノが相づちを打つ。恐らく舞台監督よろしく指示を出しているのだろう。
こうして背後から二人を見れば仲睦まじく、魔女と猫の組み合わせはお似合いのカップルに見えた。
(まぁ、ディーノさんがそこまで計算してたのは間違いないな)
雲雀との恋人関係を広言して憚らない彼のことだ。周囲に見せびらかせたかったに違いない。
なんにせよ、雲雀もどことなく浮かれている様子だし、咬み殺されずにパーティーを楽しめそうだと綱吉は胸を撫で下ろした。

「…ところで、なんでナッツたちのファッションショーなんだろ」
「本当は全員でやるはずだったんだが、ハルが猛反発したんだぞ」
「うわっ!ビックリした!」
独り言のつもりが、返事があったものだから心底驚いた。足元を見ると目玉が飛び出た全身緑色のゾンビリボーンが綱吉を見上げていて、2重にビビって飛び上がる。
「雲雀があれじゃ、勝負は目に見えてるからな」
「ああー…まぁね」
あまりに似合いすぎる可愛らしい魔女コスチューム。立ち姿こそ男っぽいが、気が強い女性だと言われてもなんら違和感はないだろう。
中身を知っているだけに、怖くて近づきたくもないが。

――と、遠巻きに雲雀を眺めていたのだが、麗しの魔女は綱吉の視線に気づき、真っ直ぐこちらへ向かってくる。
慌てて周囲を見渡すけれど誰もいない。さっきまで隣にいたリボーンはいつの間にか消えていた。自分はなにかヘマをしただろうか。
そうこうしてる内に雲雀は綱吉の目の前に立ち塞がった。
(うわっ…!間近でみたらめちゃくちゃ綺麗だな…)
中身は雲雀なのに、うっかり顔を赤くした綱吉は唐突に胸ぐらを掴まれ、「ぐえっ!」と奇声を洩らした。
「一人2票だ。君、ロールとヒバードに投票しなよ」
「は…?な、なんのこと…」
「ファッションショーに決まってるだろ。ウチの子たちが一番可愛いに決まってるけど、それ以外に投票したら咬み殺す」

――純粋な脅しですか
美しい魔女が睨みを利かせると、こんなに背筋がゾッとするなんて知りませんでした。

あまりの雲雀の気迫に、涙を浮かべ顔面蒼白気な綱吉は、実はおめかしをした自分のアニマルを綱吉たちに自慢したいだけだという雲雀の心中を知らない。


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