はろいんぱーてぃー!5


「お!どうしたんだ雲雀!会場に入らねーの?」
上から山本が声をかけてきて、視線だけを送る。彼の姿は体にフィットした真っ赤なボディスーツに蜘蛛の糸が貼った、有名なアクション映画の仮装だった。
「俺はこれでいいから!なんで獄寺くんはそうまでしてドレスを着させようとしてんの!?」
「雲雀のヤローに10代目が負ける訳がありません!」
「間違った対抗意識もつなあぁー!」
ドタバタと騒がしい二人は血糊のついた白衣と、真っ黒なスーツに牙を生やしたドラキュラ。
「代わりに俺が着たのだから極限落ち着くのだ獄寺ぁ!」
「なんで芝生頭が着てんだよ!」
最後に登場したのは、今にもフックを撃ち込んできそうな厳めしい白雪姫。

このノリの良さにうんざりだと雲雀は思う。
勝手知ったるディーノの屋敷、ヒバードとロールがパーティーに満足するまでどこかの部屋で一人過ごそうと雲雀が階段を登ると、すれ違いざまに山本に腕を捕まれた。
「何?」
「せっかくだしさぁ、みんなで戦隊モノみたいにかっこよく登場しようぜ!」
「バカかお前!このバラバラな格好で戦隊なんてできるか!大体お前、赤だからってセンターやる気だろ!リーダーは10代目だからな!」
「やだよ!恥ずかしすぎる!」
「ヒーローか、かっこいいではないか!極限燃えてきたぞ!」
「いい加減に…」

馬鹿馬鹿しい群れのお遊戯に付き合ってられない。腕を振り払って去ろうとしたとき、別の客人が玄関に現れた。
「イカしたファッションしてるな、コラ!」
「全く、付き合ってられん…」
カボチャの被り物をしたコロネロに、それに合わせた可愛い衣装のラルが二人仲良く中へやって来る。
「こんばんわ。みんな気合いが入ってますね」
「俺様が一番かっこいいけどな!」
「僕はタダ飯食べたらすぐ帰るよ」
「キャッバローネ邸は初めてだが…なるほど悪くないな」
「今日はお呼びいただいてありがとうございます」
キョンシー姿の風やヘルメットに蛸足をつけた何をしたいか良くわからないスカル、普段からコスプレのようなマーモンはいつも通りでヴェルデは狼男、礼儀正しく挨拶したユニは天使のコスチューム。
赤ん坊と子供だらけの不思議な団体は、案内役のロマーリオと挨拶もほどほどに綱吉たちへ手を振った。
「師匠ではないかー!極限カボチャだな!」
「ユニたちもきたんだね」
「ち、またうるせーのがゾロゾロと…」
「なぁなぁ、いっそのこと10レンジャーみたいにしねえ?」
「良いな山本!師匠たちも一緒か!」
「だからセンターは絶対に10代目だからな!」
綱吉たちが階段を降りていくとき、雲雀は山本に腕を捕まれたまま一緒に連れられてしまった。
「だから、放せ…!」
「ん?まぁいーじゃねえか。ヒバードたちも中でヒバリを待ってんぜ!」
「や、山本ってマジで強者だよね…」
綱吉は顔がひきつった。
群れることをなにより嫌う雲雀を、その渦中に連れていくなど自分ならできない。
「でさ!決めポーズどうする?」

ここにいる全員を咬み殺してやろうか。このメンバーなら、楽しめそうな人間が結構いる。
雲雀が舌なめずりしてトンファーを構えようとしたとき、山本に捕まれた腕とは反対の手に、先ほどのキャンディを握りしめたまま忘れてしまっていた。

――暴力系のイタズラはやめてくれよ
ロマーリオの言った言葉が耳にこだまする。


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