はろいんぱーてぃー!4


「ひどいです!ヒバリさん!」

トンファーが降り下ろされる寸前、ハルの鼻先で鉄の塊が急停止し綱吉は、胸を撫で下ろす。
まさかハルが飛び出てくると思わなかった。身を呈してまでディーノを守るだなんて。
(もしかして、ハルってディーノさんのことを…)
と考えたのは一瞬、ハルは雲雀を指差して声を張り上げた。

「なんでお衣装がまる被りなんですかああー!すごくキュートな魔女っこですよ、お似合いですよ!これじゃハルたち女子の立場がないです!」
「…きみ、何言ってんの」
「なんですかそのふんわりパニエ!ずるいです!めちゃくちゃキュートでラブリーです!腕も足も細いし綺麗だし、ハルよりお肌が白いし、男子が女子より可愛くてどうするんですかああぁ!」
「だよなぁハル!恭弥のことよく分かってるな!」
地団駄を踏むハルとニコニコご機嫌なディーノの間に大きな溝を感じたものの、理由がわかって綱吉はガックリ項垂れる。
(いやまぁ、確かに似合いすぎてるけどさ…)
「馬鹿馬鹿しい。僕はもう帰る。ヒバード、ロール。行くよ」
やってられないとばかりに雲雀はディーノたちに背を向ける。
名前を呼ばれた二匹は会場から飛んできた。すると、ロールとヒバードは雲雀のコスチュームに爛々と瞳を輝かせた。
「キュピー!クピクピ♪」
「ヒバリ、キレイ、キレイ!」
「…君たちね、」
喜んでいる場合じゃないのだ。一刻も早くこの場を立ち去りたいのに、ロールは雲雀の足元を駆けずり回り、ヒバードは楽しげに彼の回りを舞う。頭痛を感じて雲雀はこめかみを抑えた。

「わぁ、ロールちゃんもヒバードちゃんもハロウィンの格好したんだね!すっごく似合ってるよ」
京子が素直な感想を述べる。クロームはしゃがみこんで、ほんのり頬を染めながら「…かわいい」と呟いた。
二匹は誉められてまんざらでもないようだ。
「がーぅ、がうぅ♪」
(ロール、すっごいカッコいいよ♪)
床に下ろされた魔法使いのナッツは鼻をロールに擦りあわせてご挨拶。
「ピピィ!」
「ワンッワンッ」
仲間の小次郎と次郎も、口々にロールたちを褒め称えてくれたから、二匹は悪い気はしない。

「ご馳走用意してるからな!みんなこっちこいよ」
「ニョ!」
ディーノの「ご馳走」という言葉に、食いしん坊のこうもり瓜は一番乗りだと会場へ一直線に走った。
「待て!バカ猫、10代目とナッツさんより先に食うなよ!」
「まぁまぁ獄寺くん、瓜もきっと腹ペコなんだよ。好きにさせてあげよう」
「俺も極限腹がへったぞー!」
「先輩、それにツナと獄寺も。俺らは先に衣装借りた方がよくねぇ?せっかくのハロウィンパーティーだしさ!」
「あー…そうだね。じゃあ行こうか」
「ハルもいつまでもむくれないで。貴女も負けないくらい充分可愛いわよ」
「ビアンキさんん〜…。ハル、いっそのこと塗り壁とかお笑い系にいけばよかったですぅ…」
「わーいご馳走だもんね!ランボさん一人で食べちゃおう」
「○※∵◎◇∠⌒∨☆!」
「ランボくん、イーピンちゃん。みんなで食べた方がきっと美味しいよ!ね、クロームちゃん」
「…うん」
「さーて、どんな出し物があるかたのしみだぞ」
アニマルたちも含め、一行はぞろぞろと会場に向かう。
ヒバードとロールは、中で待っていたエンツィオとスクーデリアのところへ行ってしまった。
(二匹だけじゃ、帰れないくせに)
ムカムカする。早くこんなところから脱出したかった雲雀は、その場にぽつんと残されてしまった。

「ほら、行けよ。ウチのボスがお待ちかねだぜ」
傍にいたロマーリオは、雲雀の肩を軽く叩いた。
「なんで群れなきゃいけないんだい」
「ハロウィンはお前が言い出したんだろ?」
「言ってない。あの人が勝手にやりだしたんだ」
「お前がボスにハロウィンの話をしたことから始まったんだ。同じだよ。お陰で今日の予定は全部キャンセルだ」
「知らないな」
ふいと顔を背けた魔女に苦笑いを浮かべて、ロマーリオは雲雀の手のひらにキャンディをのせる。
「お菓子をやるから、暴力系のイタズラはやめてくれよ〜」
そう言うと手を振って会場へ去ってしまった。
(僕は子供じゃない)
大体、大人のくせに仕事をほっぽりだしてこんなことをするほうが余程子供ではないか。なぜ自分の責任になるんだ。
ディーノの嬉しそうな顔を思い返して、手のひらのキャンディをぎゅっと包み込む。
――本当にバカだ。
周りに迷惑をかけるディーノも、あの笑顔に喜んでいる自分も。


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