はろいんぱーてぃー!2


* * *

「あなた、外国人でしょ」
「いや。だからイタリアではハロウィンはマイナーなんだって。外国人がみんなハロウィンする訳じゃねえし」
雲雀にはハロウィンのイベントがどういうものか分からない。仮装することは分かっていたのだが、他に何をすればいいか分からず、手近な外国人――ディーノを呼び寄せたのは、放課後のことだった。
「ふぅん。だったらいいよ。用は済んだし、帰れば?」
「マジでそれだけかよ!急いでこいなんて、珍しく恭弥が甘えてくれたと喜んで来たのに…」
カックリ肩を落として落ち込んでしまったディーノを、スクーデリアと彼女の頭に座ったヒバードが擦りよって慰める。
ロールは小さなシルクハットに内側は真っ赤で外側が黒いマント、首もとには赤のリボンを身につけて、「ハリネズミ版吸血鬼」に扮していた。
それはとても愛らしかったけれど、ロールの扱いよりも自分が下なのだと思うとディーノは気が滅入ってしまう。
かといって、愛する恋人のため仕事を抜け出し、腹心のロマーリオに無理を言って並中までやってきたのだ。手ぶらで帰るわけにはいかない。
(…いや、まてよ)
咄嗟の思いつきだけど、ディーノにとってそれはそれは素晴らしいアイデアが閃いた。

「そうだ!せっかくロールが変装したんだし、ウチの城でハロウィンパーティーしようぜ」
「なんで群れなきゃいけないわけ」
「せっかく草壁がロールをおめかしさせてくれたんだしさ、キャッバローネの連中にも見せびらかしたらいいだろ?」
雲雀は手元のキュートな吸血鬼に目をやる。小首を傾げて「キュ?」と鳴いた。とても可愛い。絶対に草食動物のアニマルたちとは比べ物にならないだろう。

確かに、少しくらいは自慢したいけれど群れるのは我慢ならない。
それが顔に出ていたのか、世の女性が見れば一目で恋に落ちそうなキラキラした笑顔で「雲雀の好きなハンバーグとか和食とか、たくさん用意しような!」とディーノに言われれば、まぁ少しは我慢してもいいかなと心が揺れた雲雀だった。

* * *

有言実行、即断即決、出船に船頭を待たず。
キャッバローネ主催のハロウィンパーティーは、その日の晩にキャッバローネ邸にて行われる運びとなった。

ロールはもちろん、ヒバード、スクーデリア、エンツィオもハロウィンということで衣装が宛がわれる。
「だからなんで僕まで」
「みんなが仮装するから楽しいんだろ?」
ディーノは既に着替えていた。ネコミミをつけ、首に掛けた紫の皮ベルトにはご丁寧に「HIBARI」と打ち込まれた銀のネームプレート。黒いワイシャツに黒のスラックス、お尻にはもさもさした細長い尻尾。
イケメンなネコ男に変装したディーノは、雲雀のために用意した白いボックスを押し付けた。
「僕はいらない」
「着替えてこいよ。ロールたちだって飯も食わずに待ってるぜ?」
確かにご馳走を目の前にした彼らは行儀よく待っていた。
雲雀を見上げるロールの「ヒバリさんはどんなカッコするのかな!?」と期待に満ちた視線が痛い。
「まったく…少しだけだよ」
渋々了承して着替えのために部屋を出た雲雀の姿を確認してから、ディーノはガッツポーズを決めた。
「楽しみだな!ロール!」
「クピー♪」
そんな一人と一匹を遠巻きに見ていたヒバードは、ディーノの喜びようになにやら不穏なものを感じてドアの向こうに顔を向ける。
(ヒバリさん、大丈夫かな…)


城の呼び出し鈴が鳴り、ロマーリオが重厚な玄関を開く。招いた客人たちがやってきたようだ。
「よぉ!待ってたぜ」
「「こんばんわー」」
ボンゴレ10代目の沢田綱吉を筆頭に、並盛のメンバーが大勢でやってきた。
もちろん彼らの匣アニマルたちも一緒だ。
ディーノはハロウィンパーティーに彼らやアルコバレーノを招待した。祭り好きの彼らは、必ずこの話に乗るだろうとディーノは踏んでいたのだ。なにせリボーンに至っては普段から変装ぐせがあり、自他共に認めるコスプレの達人。こんなイベントを見逃すはずがない。

雲雀の準備が整うまで、来客をもてなそうと玄関先へ向かい、ディーノは客人たちに微笑みかける。
京子とハルとクロームは色違いでお揃いの魔女の格好。スカートの丈は膝上で、露になったデコルテが可愛い。女の子はこうでなければいけないと、ディーノは何度も頷いた。
彼女たちの腕の中には、噂のコスプレをした瓜とナッツ、それにムクロウや小次郎もいる。
ランボとイーピンは牛丼に跨がり、その雷牛を引く綱吉は普段着だったが、さながら牛飼いといったところだろうか。リボーンはビアンキと連れだって、二人して緑色のゾンビの格好をしている。リアリティを追求した見た目が怖い。

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