はろいんぱーてぃー!1


「キュー!クピクピィ」
「…どうしたの。この子、なんか変じゃない?」

さっきから雲雀に鳴いて擦り寄るロールを抱えあげ、彼を落ち着かせようと頭をなでていたが、一向に鳴き止む気配がない。
珍しく困惑した雲雀は、散歩から戻ってきたヒバードに助けを求めた。
「ハロウィン、オメカシ」
「ふぅん。群が好きそうなイベントだ」
「カソウ、ロール、ヤリタイ」
ヒバードの言葉に泣き止まない彼の目的がわかり、雲雀はロールへ冷ややかな視線を送った。
「…僕がそんな風紀を乱す行為を、許すと思うの?」
「キュピイイィー!」
ロールはさらに鳴き声を上げた。
やれやれ、子供には脅しが効かないようだと雲雀は肩を竦める。
それをみたヒバードは、今日、校内で起こった出来事を雲雀に聞かせた。

* * *

「ナッツちゃん、瓜ちゃん」
屋上で優雅にお昼寝をしていた二匹に声を掛けたのは、学校のマドンナ・笹川京子。
彼らの主は屋上へ通じる扉の反対側で弁当を広げていたため、この時点では京子に気づいていない。ナッツと瓜は扉の程近く、フェンスぎわで遊び疲れ仲良く丸まっていて、それを見つけた京子はニコニコ微笑みつつ軽やかな足取りで二匹に近づき、しゃがみこんだ。
「にょあぁ…」
「がうー?」
寝ぼけ眼をうっすら開けて、二匹は京子の手の中のものを見た。
「あのね、もうすぐハロウィンでしょう?さっきの家庭科の授業で作ってみたの。ナッツちゃんと瓜ちゃんの衣装だよ」
差し出されたものは、濃紺の艶やかなサテン生地で作られたマントと帽子、それに真っ黒な羽根。
京子は魔法使いの衣装をナッツに、コウモリの衣装を瓜にそれぞれ取り付けた。
「かわいい!」
「うにょー…」
こうもり猫と化した瓜を抱き締めた京子は、目を輝かせて愛らしい瓜の体を撫で回す。
いつもなら抱き上げられれば我慢できずに暴れまわるが、可愛い女子ならされるがまま大人しい瓜だった。
「がう、がう!」
「ナッツちゃんもかわいいね!きっと似合うと思ってたんだ」
ナッツは京子が作ってくれたマントに目を輝かせ、嬉しそうな鳴き声をあげる。
(これ、ナッツが変身したときのツナみたいだ!かっこいいなぁ〜…)
ナッツはこの姿を誰かに自慢したくて自慢したくて仕方がなかった。
その時、たまたま近くを通りかかったロールに白羽の矢が当たったのだ。

* * *

「…なるほどね」
雲雀はことの経緯をヒバードから聞いて、まだ鳴きやまないロールを細い指で優しく撫でる。
「キュークピピィ…」
「まったく、呆れてモノも言えないな」
ひとつため息を溢して草壁を呼んだ。2、3言葉を交わすと、草壁は戸惑いながら部屋を後にする。
なんだろう?ハテナ顔のヒバードとロールに雲雀は振り返った。
「一番可愛いのはウチの子たちに決まってるだろう。ハロウィンで最強の可愛いアニマルが誰なのか、知らしめる必要がありそうだね」
ロールは雲雀の提案に大喜びだ。「キュウキュウ♪」と愛らしく鳴いて雲雀に頭を擦り付ける。「任せておいで」となにやら不敵に笑う雲雀は、ナッツや瓜に目にモノを言わせてやろうと俄然やる気だ。
(ヒバードも変装しなくちゃいけないんだ…)
そんなつもりは毛頭なかったのに巻き込まれる羽目になったヒバードは、盛り上がった二人に気づかれないように目を座らせてため息をついたという。


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