再会 [ 75/78 ]
「来てる……ジジイの船が……時間通りにな……あと20分程の距離だ」
「……、じょ…乗客はジョセフ・ジョースターさん一人なんですか?」
「そうだ、乗組員はすべてSPW財団の人間だ。スタンド『レッド・ホット・チリ・ペッパー』は電気のあるところしか動けないがこれから奴は何が何でも何らかの方法でこの海を越えてあの船に乗り込もうとするだろう」
つまり、敵が先に着いてしまえば抵抗する手段はない。
それは、船にいるジョセフさんの……
「だから、絶対に私たちが先に着かないといけないの。」
「もし敵が先に着けばジジイは殺される。だが、俺達の方が早ければ、ジジイは守れる」
承太郎さんが言い終わると、仗助と億泰はボートの中にはスタンドはいないと確認し終えたようで、その旨を承太郎さんに伝えていた。
「このボートの『バッテリー』にゃあよぉ〜、奴は潜んでねえ!異常無しだ、出発出来るぜ!」
なにもないのなら、すぐに全員でジョセフさんを助けに行くことができる。
そう思っていた時だった。
「仗助!そのボートで向かうのは俺と億泰と千里だけだ……お前は康一くんと莉緒と一緒にこの港に残れ!」
承太郎さんが予想だにしないことを言った。
「な?……何言ってんだ?オレが残るだとォ〜?」
「なんですって!!『残る』ですって」
ジョセフさんの危機なら、仗助を向かわせた方がいい。みんなそう思っていたみたいで康一君も承太郎さんに抗議する。
「まあまあ、ちょっと落ち着いて」
そう莉緒さんが二人を宥めると、承太郎さんは話を続ける。
「今『チリ・ペッパー』の本体は……この港のどこかに隠れている、間違いない。この港のどこからか俺達がボートに乗って海に出るのを見ている……そして奴は!俺達が海に出たとたんジジイの船に向ってすかさず何かを飛ばすだろう!!」
「『と』ばす?」
「と……とばすって、空を『飛行』するってことですか?」
飛ばすとは一体どういうことだろう、あのスタンドは船を使うとかしない限り飛ぶようなことはできないはず……。
「そうだ。俺の予想では奴は船は使わん。バッテリーが付いていてスピードがモーターボートより出ればいいんだからな!
バイクを盗んで逃げようとしたように『チリ・ペッパー』をバッテリーの付いた何かに乗せて飛ばす!この『ボート』を追い越すためになぁ〜」
「飛ばすってよぉー、何を飛ばすって言うんだよぉ〜」
モーターボートより早く動けて、バッテリーをもっているもの……
ひとつだけ、思い浮かぶものがあった。
「もしかして……ラジコン……?」
「そうだ、『チリ・ペッパー』は町の模型屋からラジコンを盗んでるってとこかな」
「『ラジコン模型の飛行機』!!
あ、ありうるよッ!スピードが乗れば模型飛行機とはいえ時速100キロ以上出るって言うよッ!このモーターボートより早いし!それに操縦は『チリ・ペッパー」だから燃料とバッテリーの続く限りどこまでも遠く、どこまでも高く飛べる!『コントロールの電波』には関係ない」
そんなものを飛ばされてしまったら始末に負えない。
少なくとも、海の上に出てしまえば止めるすべはほぼ思いつかない。
「だから仗助、おめーは何かが飛んだらこの港で『本体』を探さなくてはならねえ!康一君の『エコーズ』は射程距離50メートルで、莉緒の『スカイ・カップ』の射程距離も広い。探すのを手伝える。」
確かに、筋は通っている。承太郎さんが言うのが最善策だ。
「もし奴に俺達のボートより先に進まれたのなら!『自分の父親』はおめーが陸地で守らなくてはいけないんだからなッ!
わかったな……仗助……」
「ああ。一秒を競いそうな事態だっつーことがよーくわかってきたよ……」
本当は、本心は、今はそういうことは関係ない。
とにかく、目の前の敵と味方をどうするべきか考えるのが大切だから。
私たちがボートに乗り込むと、康一君が心配そうにこちらを見ている。
「ガンバッてね、億泰くん、千里さん。」
「ありがとよ、康一………」
「康一君たちも、陸は任せたから。」
何故だろう、少しだけ嫌な予感がする。
でも、大丈夫だと思いたい。
「そんな心配そうな顔しないのー、絶対負けるわけないんだから!承太郎、ジョセフさんは頼んだからね!」
少し重苦しかった空気を緩和するように、莉緒さんは明るい声でいう。
こんな状況でも、笑顔を作れるのはすごいな。
「自分の方を心配しねーのは相変わらずだな……お前は。」
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