集合 [ 73/78 ]
「とらえたぜ――ッダボがァ―――っ」
「やっ!やったあ―――」
「億泰君すごーい!」
私たちが億泰とチリ・ペッパーの方に近づ久前にはもうすでに決着はほぼ付いていた。億泰の勝利、といった形で。
「億泰!……改めて考えてみりゃあよぉー、奴のスタンド……恐ろしいスタンドだな。
今まで馬鹿にしててゴメンね」
チリ・ペッパーはハンドから逃げるために、地面をはいずりまわる。それもだんだんと動きは鈍くなり始めている。
バイクのバッテリーがなくなってきたということか……もう勝利は確定している。
「み……見てッ!『レッド・ホット・チリ・ペッパー』の電気の輝きが無くなった!錆びた鉄クズみたいな色になったよッ!弱っているんだッ!スタンドパワーが無力になってきているんだッ!」
「こいつは億泰の勝利かあ〜っ」
「……承太郎さん、あのままトドメをさすのは」
あのままトドメをさすということは、そういうことだ。弓と矢のありかを訊けなくなってしまう。
私がそれを訪ねると承太郎さんはわかっていると言い
「億泰ッ!とどめは刺すなッ!俺達がそこに行くまで待て!
お前の勝ちだッ!そいつからは『弓と矢』が今どこにあるのか聞きださなくてはならんッ!」
今からすぐとどめを刺そうとしていた億泰を制止するべく、承太郎さんが言う。
その言葉が届いたのか億泰の動きが止まる。
「……何だろう、様子がおかしい」
ここからじゃ詳しいことはわからないけれど、チリ・ペッパーが億泰に対して何か言っている事だけはわかった。
そして、それは挑発に近い行動で、億泰にとどめを刺させようとしている。
「億泰!『弓と矢』のありかを聞き出すのだ…・・もうそいつは逃げられん!」
「億泰!そいつの話に耳を傾けないで!」
嫌な予感がして足を速める。
「とどめ刺されて死にてえのかてめーっ」
億泰の叫び声が響く。
「とどめを刺すな!億泰ッ!」
どうやら承太郎さんのこの言葉は逆効果となってしまったようで、
「ウオオオオオウダラァーッもうどっちか考えるのは面倒くせえぇぇッ!チクショォオオーッ」
「攻撃するな!」
「俺を止めるな承太郎さんよォーッ『こいつは兄貴を殺した』!『俺がケリをつけてやる』!真実はそれ一つだッ!俺の『心の中』によぉ〜っ
くたばりやがれーッダボがァ!」
億泰はついに耐えきれず、チリ・ペッパーを地面に届くほどに削り取った。
「ひええっ!」
その光景を見た康一君は、仗助にしがみつく。確かにこの映像はショッキングだ。
「グレート……これで『弓と矢』を探すのが面倒になった。しかしカタがついたのは確かだがよぉ……」
「後味が悪いね……。」
「ああ……。」
しかし、問題はそこではなかったらしく承太郎さんと莉緒さんはまだ終わっていないとでも言いたそうな表情をして億泰の方を見ていた。
「いや……何か様子がおかしい。
『チリ・ペッパー』のやつ、やはり……何かを企んでいたようだ」
「億泰君早くそこから離れてッ!!電気ケーブルがチリ・ペッパーの目的だったんだよ!!」
何をたくらんでいたのか、一番初めに気付いたのは莉緒さんで確かに億泰の削ってしまった地面を見ると電気が出ていた。
その電気ケーブルから出る電気で、チリ・ペッパーが回復してしまうのは一目瞭然だった。
『おかげで蘇った』
さっきまでの弱り方がウソみたいに、チリ・ペッパーはぴんぴんしていた。
完全に回復。明らかに億泰が危険だ。
『俺は…本当の本当は……弱っちまっていたのだよ……ボケが……
バイクのバッテリーはたったの12ボルトしかねえからなあ〜。危ねえ危ねえ。
億泰……もしお前がお利口さんで承太郎の言うとおりとどめを刺しに来てくれなければ俺はバッテリー切れで消滅していたよ……
町中の電線はどこを走っているか全て知っている……逃げるのはこの地下ケーブルからと思っていたが、しかしバイクからの距離が遠い。この地下ケーブルを掘り起こすスタンドパワーは……とてもなかった』
相変わらず、何を言っているのかは聞きとれないけれど、嫌な予感がした。
嫌な予感は的中し、チリ・ペッパーはいつの間にか億泰の背後に回っている。
「う、動きがッ!さっきより動きが早いッ!」
康一君の言った通り、さっきとは比べ物にならないほどのスピード。
万全な状況のチリ・ペッパーに億泰は勝てるのか……
「うだらあ〜ッ!」
ハンドとチリ・ペッパーが正面から衝突する。
そして、私たちが次の瞬間見たのは……
「オワァァァァッ、ウアアアアアアアアアッ!」
チリ・ペッパーの攻撃により右腕の切断された億泰だった。
「億泰く―――んッ!」
「億泰っ!!」
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