不思議なイタリア料理店 [ 68/78 ]
「シニョリーナ、デザートのカンノーロデス。」
莉緒さんからここの料理店の事を訊こうとした時、私の注文していたデザートが来た。カンノーロ、筒状の何かクリームのようなものが入っている見たことないお菓子だ。
「おいしそー!今度来た時はそれも食べたいな〜。」
……莉緒さんはここの料理を全て食べつくす計画でもしているんだろうかと思うくらいなんだけれど、ここは突っ込んじゃあいけないところだ。
机にまだ残っているお菓子を横眼に見ていると机の上にタオルが置かれた。
「……?」
どういうことなのかわからずついわけわからず、トニオさんを見る。
別に、手を汚しそうな食べ物というわけでもないのに。
「ああ、これはカンノーロを食べた後にお使いくだサイ。」
そう言ってトニオさんは厨房の方へ行ってしまった。
……とは言われてもやっぱり必要性が見当たらない。
「甘い……。」
フォークを使い口に運ぶと甘さとチーズの少しの酸味が口に広がる。
「千里!!料理を食うなッ……遅かったか」
「……えっ」
振り向くと、慌てた様子の仗助とすごい表情した億泰がいた。
一体私が莉緒さんと話て、お菓子を食べるまでに何があったというのか。
「何か変な感じはしねぇーか?」
「別に、何も……」
特に痛かったりさっきみたいに涙が出たりとかはない。それを訊くと仗助はほっとしたようによかったと言った。
本当に何があったのだろう。
「スタンド使いだったんだ、あの『トニオ・トラサルディー』は」
「スタンド使い!?」
不思議なことばかりあるとは思っていたけれど、まさかスタンド使いだったとは。さっき料理にクレイジー・ダイヤモンドを使ったところ料理にスタンドが居たらしい。
……ちょっと待って、ということはさっきから不思議なことが起きても何にも思わず、この店に何度も来ている莉緒さんはそのことを知らないはずが……。
「莉緒さん、アンタ……」
「なぁに?仗助君」
疑惑の目を向けられていても、莉緒さんは笑顔を絶やさない。そんなわけない、これは完全に……。
莉緒さんが特に何もしてこないとわかると仗助は厨房の方に行ってしまった。トニオさんの方をどうにかするべきだと踏んだんだろう。
私は……それについて行かなかった。
「莉緒さん、もしかして……からかってたりします?」
「んー……そんなつもりはないけど、そう見えた?」
「ええ、とりあえず楽しんでいたことだけはわかりました。」
しっかり説明してください、今と問い詰めると莉緒さんはバツが悪そうに
「えっと、トニオさんはスタンド使いはスタンド使いだけど、その能力を人の健康のために使ってる人だよ。だから特に止める必要もないかなって思ったんだけど」
「だったら止めてください!」
「トニオさんを?」
「仗助をです!」
全てが分かると私はすぐに厨房へ、仗助の後を追いかけた。
案の定あの人は全部知ってた。知っていて普通に見ていた。確かに敵じゃないからどっちも止める必要はないけれど、せめて説明はしてほしい!危害は加えられなかったけれど!
※
「仗助ッ!待って、全部勘違いだったから!」
「千里。……勘違いって何が」
「莉緒さんの説明不足……ッ!?」
さっき莉緒さんから聞いたことを説明しようとした時、頭が急にキンっと痛くなった。かき氷を急に食べた時にする、あの感じ。
「どうした?千里……まさか、さっきの料理がッ……」
「……ッ、料理は関係な………どうしたの仗助」
頭の痛みを我慢して話を続けようとした時、仗助が私を見て固まっているのに気がついた。後ろに何かいるのかと思って後ろを見ても何もいない。
右を見ても左を見ても何もない。
だとしたら自分……
「おめーはそこにいろッ、いいな!!」
一体自分に何が起きたのか確認している間に仗助は厨房の奥の方へ行ってしまった。
自分に起きていたことはすぐに分かった。頭……額を触った時に手にぬるっとした感触があり手を見ると血がべったりと付いたからだ。
これで、タオルをテーブルに置かれた理由がわかった。これを拭けということだったんだ。
「―――っ、そんな納得している場合じゃなかった。」
急いで仗助を止めないと。なんでこうタイミングが悪いんだろう何から何まで……。
というか、今億泰も厨房奥に走っていったような気がする。一体なにをするつもりなのか、なにより私も厨房奥に向かわなくては。
『億泰―――ッ!』
……なんだろう、もう手遅れな気がしてならない。
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