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不思議なイタリア料理店 [ 64/78 ]

あの看板から道を進んで、多分100mといったところ。ひとつのお店が目に入る。


「千里〜早くしろよぉ〜」


そう億泰にせかされとりあえず早足でその店に向かう。
入口まで来るとようやく来たのかと億泰に言われる。違う、二人が早すぎるんだ。


「よし、早く入ろーぜェーっ」


億泰がドアを開けると、チャリーンとベルの音がする。最近のよくある電子音とかじゃないところがやっぱりいいなと思う。
そんな事考えながら前を見ないで進むと、


「―――っわ」

ぶつかった。別に閉まりかけのドアに当たったとかそういうのじゃあない。
とっくに店の中に入っていったとおもた億泰が入り口前で止まっていて、ぶつかったんだ。


「おい、どうしたんだよ億泰」


仗助が転ばないように支えてくれたから大丈夫だったけれど、一体なにがあって立ち止まったんだろう、億泰は。


「美味し――――いッ!やっぱすごい、ベネ!ディ・モールトベネだよトニオさんの料理は」


ああ、わかったような気がする。この聞き覚えのある声で何があったかわかったような気がする。
億泰の横を通り、店内にはいるとやっぱり中にはよく知る人がいた。


「あれ、千里ちゃん。奇遇だね」

「いや何してるんですかこんな所で」


何をしているも食事、と言った莉緒さんのテーブルにあるのはデザート。イタリアのお菓子は綺麗なものが多いな……じゃあなくて


「何がどうしてそう「あ、仗助君に億泰君!こんにちは」いや、聞いてくださいよ!」



細かいことを気にしないといい莉緒さんは仗助と億泰に挨拶をしている。
ああ、すごく元気そうだ。寝不足とか寝不足とか寝不足とか寝不足とは無縁とでもいう位に。うらやましい。


「は、初めましてッ、まさかこんなところで莉緒さんと会えるとは思わなかったっスよ!」

「あ、そっか実際に会うのは初めてだったね。初めまして億泰君。」


そういえば確かにこの二人初対面だった。初対面の割には気があっているみたいだけど……。うん、まだあの事を言うのはやめておこう。


「仗助……」

「わかってるぜ。今教えるのはあまりにも酷ってやつだ」


黙っているのも優しさと、莉緒さんとの会話でそう言う話が出てこない限り口には出さないようにしようと仗助と決めた。


「この店結構いい感じでしょ?料理もすごく美味しいし」

「そうなんっスか!たしかに雰囲気イーイーっスよね、おれイタリア野……イタリアのセンスとかデザインとかすげー好きなんだよなあ〜」


その会話を聞いてようやく落ち着いてまわりを見る。内装はとてもいい感じだ。綺麗で何となく華やか。華美すぎないところがなんかいい。


「でもよ〜テーブルがたったの2ツっきゃねーぞ、なんだこの店は?」


そういえば、店にしてはテーブルが少なすぎる。どうしてだろう。

そう疑問に思っていると奥の部屋……多分厨房だろう。


「それはワタシがヒトリでやってるからでス」

声がして、そこから一人の男性がこちらに来た。
白いエプロンにコック帽。確実に、この店の人なのはわかる。とりあえず微笑んでいることから、さっきから結構騒いでいたけれど怒っていないという事だ。よかった。


「ヒトリでウェイターも兼ねていますから、テーブル2コで精一杯なんデス。
いらっしゃいマセ、さ!お席へドーゾ……眠たそうなシニョリーナ。」

「あ、ありがとうございます」

ス、と椅子をひいてもらいドーゾといわれ私はお礼を言ってお言葉に甘えて、その席に座った。
それにしてもずっと眠いと言っていたけれど改めて初対面の人にそれを指摘されるとさすがに何か恥ずかしい……。


「トニオさん紳士的だよねー、千里ちゃん。」


「グラッツェ、シニョーラ」


隣のテーブルに座っている莉緒さんが私の方を見て言うと、コックさんはイタリア語で莉緒さんにありがとうと言っていた。
シニョーラって呼ぶとこ、この人は莉緒さんが何歳なのかとか知っているんだろうか……そう言えば最近行きつけの店がてきたと言っていたけれどここだったのかな。






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