恋する美少女‐拉致監禁‐ [ 60/78 ]
「おーいッ康一!おまえ無事か!」
「大丈夫か!?康一!」
「康一君……!」
別荘近くに私たちが着くと、康一君は一人でこちらの方に歩いてきていた。
見たところ、そんなに大きな怪我とかはない。由花子さんをどうにかできた、ということなんだろう。
「仗助くん!億泰くんッ!千里さん!
遅いんだよ来んのが……もお〜っ」
その言葉に私はごめんと一言謝って、またふと思った。
「あの、由花子さんは……「お……おいみろ!ありゃ由花子かあ!?何があったんだ髪の毛が真っ白だぞ」」
億泰の指差す方を見ると、確かに由花子さんはいた。綺麗な長い黒髪、は見る影もないけれど。
「でもよお〜あの女、幸せそうに笑ってやしねーか〜?こっち向いてよぉ〜」
「え!?」
「…………」
「ほ……ほんとだぜ〜ありゃ不気味だあ〜」
不気味だ、とは思わなかった。
寧ろ今まで見てきた由花子さんの表情の中でも一番良い顔だったと思う。
晴れやか、というかなんというか。
「ヒ……ヒェェ!は……早く逃げようッ!」
「助けて仗助くーんッ!」
「お……俺に頼るな……」
「由花子さん、嬉しそうでよかった。……――ッ!逃げるの早い……」
どれだけ由花子さんが怖いのか。康一君は仕方ないにせよ、そんなに瀕死(か良くわからない)な子から必死に逃げなくても……。
※
「広瀬!お前今回の試験ガンバッタな!やりゃあできるじゃあないか!」
後日談のひとつだけれど、この後にあった英語のテスト……康一君はこのように先生に誉められる点数、100点満点を取った。
ただ康一君はそのことを喜んだりはせず、
複雑な気分だ
と言っていた。
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