親子 [ 42/78 ]
少し俺の過去の事をしゃべってやろう
そこから聞いた話は、あの二人の兄弟の父親がどうしてこうなってしまったかという事。
金のためにDIOに心を売ってしまった父親の末路。
肉の芽が暴走した結果、一生死ねない体になる。それも、絶対に治ることのない。
その話し中、父親が箱をあさりだす。中身がそこらじゅうに散乱した。
「一日中こうやってるだけだ。毎日毎日…来る日も来る日も10年間…
無駄にガラクタ箱の中を引っ掻き回しているだけさ……箱を取り上げると何日も泣きわめくしよ〜〜
イラつくぜ、こいつを見てるとよ〜〜……『生きている』ってことに憎しみがわいてくるぜ」
彼は父親に近づくと、首に付いた鎖を引っ張り自分のほうを向かせる。
「ちらかすなって何度も教えたろうッ!」
そう怒鳴りつけ、殴り蹴る。何度も、何度も血が出るまで何度も。
「やめなよ、自分の父親でしょ!?」
「ああ…そうだよ…実の父親さ。血のつながりはな…
だがこいつは父親であってもう父親じゃあない!DIOに魂を売った男さッ!自業自得の男さッ!
そして、また一方で父親だからこそやりきれない気持ちっつーのがおまえにわかるかい?だからこそフツーに死なせてやりてえって気持ちがあんだよ
こいつを殺した時にやっと俺の人生が始まるんだッ!」
そう言っている中でも、父親はこの隙にとばかりに箱の中をいじっている。
あんなに殴られていたって言うのにもう傷も見えない。
「ちくしょーやめろつってんだよ!イラつくんだよッ!「おいそこまでにしとけよッ!」」
父親を蹴ろうとしたところで仗助が制止する。
「というわけでよ…絶対にこの『弓と矢』はわたすわけにはいかねーっ
絶対になあ――――っ」
「かんちがいするなよ…その『弓と矢』はそのあとだ…
気になるのはこの箱でよ―――っ!」
仗助はクレイジー・ダイヤモンドで箱を殴った。
一体何のためにか、その場にいた者は全員理解できなかった。
殴られた箱は、またもとの形に戻る。その中身も……
「写真……」
「箱の中に写真が!」
四人の家族が、楽しそうに映っている写真。これはきっと……
「なにか…千切れた紙切れのようなものをつまんでいるから形を治してみたら何かと思ったらよ…なるほどな」
その写真を父親は手で持ち、じっくりと見る。
「おおおおおぉあぁあぁああぁああ〜っ」
言葉にはなっていない。一切、でも感動してか、嬉しくてか泣いている。
その様子に一番驚いているのは、億泰の兄だ。
「か…家族の写真だ…い…意味があったんだよ、10年間無駄に繰り返していたと思っていたこの動作には意味があったんだよッ!
当時の息子たちの写真を探していたんだ…今の事はわからないのかもしれない、でも…彼の心の底には……思い出があるんだよ昔の思い出が…」
父親は写真をほおずりするかのようにして泣いている。
心は、全部失ったわけじゃあなかったんだ。
「『殺す』スタンド使いよりよ――『治す』スタンド使いを探すっつーんなら、手伝ってもいいぜ」
「うん、それなら私も協力する。」
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