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旅立ちの日 [ 3/78 ]

「休日の朝から元気だね、二人とも」

「さっきから見てないでどうにかしてくれませんか」


このやり取りを笑顔で見ているのが莉緒さんの夫、花京院典明さん。

てか奥さんどうにかしてください本当に。

時間が本当にまずいんですと訴えると、莉緒さんを引き離してくれる。


「莉緒、千里が本当に困ってるから駄目だよ。」

離れたところで手荷物を持ち距離を取る。

また絡まれたら厄介だ。


「典明君に裏切られた―ッ!」

近所迷惑である。

「莉緒、」

「え?」


「僕が君といる時間をもっと長くする、それじゃあ…ダメかい?」


そう言って典明さんは莉緒さんを抱きしめた。

その様子を見て私は朝から胸やけがする。


「あ、お邪魔のようなので行きますね。」

とりあえずもうここは二人の世界のようなので私はこっそりその場から逃げだす。


駅に向かう、この時間なら間に合いそうだ。

新幹線に乗ったら行先は


「S市…杜王町か…」


誰も私のことを知らない土地で、一人暮らし


平平凡凡な人生が壊れ始めたのは

その町に住んだことから始まった。





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