兄弟 [ 33/78 ]
「よっ、アンジェロ」
「こんにちは、アンジェロ」
仗助の家の近く。
この前の一件の裏で起きていた出来事、日本犯罪史上最低の犯罪者片桐安十郎との戦いでの副産物。
変な形をした岩はアンジェロ岩は仗助がその犯罪者と岩を一体化させたものだ。
私ははじめてそれを見たけれど…人としての原型ってものはない。
まあ、そうなっても仕方ないくらいの最低な奴だったから当然の報いだろうけど。
それを見て仗助があいさつをしていたから、私も何となく声をかけてみた。
この行為を見て康一君は不思議に思っていたみたいだけれど、少し間があってよっ、アンジェロと聞こえた。ついやりたくなるんだろうな。
「ところでさあ、あの承太郎さんと莉緒さんはどーしたの?」
そっか、康一君はあの二人となんやかんやで知り合いだった。
「ああ、あの人たちはまだ『杜王グランドホテル』に泊ってるぜ
…なんでもまだこの町について調べることがあるそーだぜ。何を調べてるとかは千里のほうが知ってるな」
「ヒトデ」
「え?ヒトデ?」
「あ、なんでもないの気にしないで。」
「ふ〜ん…」
うん、莉緒さんの言うとおりに言わなくってよかった。
康一君あたりに私たちが何を調べてるか聞かれた時はヒトデとでも答えておいてよ☆
なんて言われていたけど言わなくてよかった。
とりあえず、康一君は深くは追求しなかった。
その前に違うことに興味が行ったからだと思う。
「仗助君…たしかこの家3・4年ズウーッと空き家だよね…?」
ぼろぼろに荒れ果てて、立ち入り禁止の看板がまた雰囲気を出している家がそこにあった。
「ああ、こう荒れてちゃあ売れるわけねーぜ、ブッ壊して立て直さなきゃあな」
「いや…誰か住んでるよ、引っ越してきたんじゃない?」
康一君が指をさした窓のほうに人影があったという。
こんな昼間から幽霊?
仗助が言うには不動産屋が浮浪者対策に見回っていたりしているともいうし、人がいるのはまずあり得ない。
「ひょっとして幽霊でも見たのかなあ…ぼく」
「確かに、こんな所に人がいるはずないしね」
「お…おい、二人して変なこと言うなよ…幽霊は怖いぜ!俺んちの前だしよォ」
スタンドだって幽霊と大差変わらないと思うけれど。
…違うのかな?
康一君は門に首だけ出して中を見た。
さすがに庭には何もいないと思うけど…。
「それにしても仗助、幽霊もスタンドも同じようなもんじゃないの?」
「どう考えても別もんだろ!?幽霊はもっとおどろおどろしいっていうか…」
さっきの疑問について話していた時だった。
「あっ!」
なにかを蹴る音、それと同時に何かがしまる音。
「康一君!?」
「ひとの家をのぞいてんじゃねーぜガキャア!」
ふたりで振り向くとそこには学生服を着た男子が居た。
その人は門を足で蹴り閉めようとするため、康一君の首だけが見事に挟まってしまっている。
「おい!いきなりなにしてんだてめーっイカレてんのか?放しなよ」
だが、足をどかそうともせず、この家に妙な詮索をするな、などと言ってくる。
「ちょっと、いい加減足どかして。殺人犯になりたくないでしょう?その年で」
仗助と男子の言い争いが開始する前に康一君をどうにかしないとと思って言ったその刹那、ことは起きた。
いや、起きていた。
何かが康一君めがけて飛んできた。
そして、その飛んできた方向にあの夜に出会った男とそっくりなシルエットに気付いた時には、矢は康一君に刺さっていた。
あの時の私と同じように。
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