また来てしまう [ 9/78 ]
家に入るのはこれが二回目。
男の人の家にこんなに出入りするのはいいんだろうかとも思うけれど
まあ、露伴先生はいい人(?)だから大丈夫かな。
ショートケーキ、チーズケーキ、フルーツタルト、
「早く選ばないのか?」
「え、私待ちですか」
「ぼくは正直どれでもいいからな」
「……じゃあフルーツタルト貰います」
椅子は二つあったので座ってもいいかを確認して座る。
露伴先生とケーキを食べるというのもなんか奇妙な感じだった。
夕飯食べてないのにケーキはなあ…とも思ったけれどまあいっか。
「千里」
「はい?」
「莉緒、というのは君の友人か?」
まさかの莉緒さんの話題、
…あの人は友人と言うのかな
「近所の…お姉さんみたいな感じです。」
「近所?ならなぜ自分で行かず君にサインを頼んだ?」
「ああ、私最近この町に引っ越してきたばかりで…
だから莉緒さんは此処に来る前の近所の方なんです。」
それにしても、意外なことを聞くな、露伴先生って。
漫画家はあれなのかな、人が普通聞きそうにないことを訊くのかな。
「それじゃあ会える可能性は少ないか…」
この時の露伴先生のつぶやきは小さく私には聞こえていなかった。
結局、露伴先生に送ってもらって、家に着いた。
「…昨日はいろいろありすぎて計ってないからな…」
お風呂からでて体重計に乗った時ことは起きた
「…壊れた??」
20キロ近く、体重は減っていた。これはダイエット成功とか喜ぶとかじゃない。
『〜♪〜♪』
ケータイの着信音が響く。
体重計新しいの買わないといけないのか…
「…莉緒さんか。はい、もしも…」
『千里ちゃああん!!私もう駄目!!』
いきなり大音量の声。
思わずケータイを耳から話した。
「…どうしたんですか、私の耳を壊す気ですか?」
『それがね、ひどいの!典明君が…
あれ、千里ちゃん機嫌悪い?』
それは、いきなり電話に出て早々に耳を破壊されかけたらこんなテンションにもなる。
そのうえ、買ったばかりの体重計が壊れたし。
「ちょっと体重計が壊れたりしただけです」
『へー、なに?たたきつけたりしたの?』
「しないですよ。全く…20キロ減るとかあり得ない。」
つい愚痴をこぼすと、電話の向こうの莉緒さんが一瞬静かになる。
そして、
『千里ちゃん、最近何か忘れた気がするとか、自分の意志とよくわからないところで
行動を起こしたりしなかった?』
真面目な声で言った。
考えてみる、でも忘れたことなんかないと思う。
それ自体を忘れているならどうしようもない。
「忘れたことはわかりませんけど、いつの間にかやっていたことなら…」
『なに?』
「露伴先生の家にどうしても行かないといけないって気分にはなりました。
まあ、もともと衝動で動くタイプの人間でもあるから当てはまるかわかりませんけど…」
此処まで言うと、莉緒さんは笑っていた。
何が面白いのかは全く分からないけど笑っていた。
『あ、気にしないで。ちょっと、面白いことになったなって思っただけだから』
「…はあ」
深くは追求しないでおいた。
『体重計、そのうち直ると思うから新しいの買わない方がいいと思うよ。』
「直るって、え?」
一体どういうことかもわからないうちに莉緒さんは電話を切った。
それどころか…
「…結局あの人何の要件でかけて来たんだろう」
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