-->避けろ!助けろ! | ナノ ▼31 後日、バッドエンドじゃ終わらない


あの世に続くこの路を通るのは二回目。

旅していた時はあっという間だったな、と思いつつスカイ・カップについていく。

『この扉の向こうが、あの世ってやつよ。』


その扉は建物とつながっているわけじゃなく、ただその空間に置かれているという感じだった。

『ここで待ってなさい、神に報告しないといけないから』

そう言うとスカイ・カップは先に扉の向こうに行ってしまった。


「あの世にも手続きとかあるのかな…」


随分事務的なあの世だな、なんかいやだ。


扉の前で待ちぼうけ。

あまりに暇すぎてそんな中頭は勝手に考え事を始める。


あの後、みんなはどうしてるんだろう?

運命を変えたけど元気にしてるかな?

あ、まだ別れて一時間も経ってないんだった。

「…カキョ」

おかしいな、さっき別れたばかりだって言うのに、すごく長い時間離れている気がする。

叶っちゃいけない恋、もう絶対に会うことのないキミのことが気になった。
できることなら、あの世界にずっといたかった。でも、それがかなうわけない。

遠い遠い世界で、生き残った世界でキミは何をしているんだろう。

そう思ってふと髪のリボンに手をやった。カキョから貰った、大切な……


「……あれ?」


片方ない。対にあったはずのリボンの片方を眺めてぼぅっとそう思った。

でも、何となくそのもう片方のリボンはカキョが持っている気がしてたいして気にならなかった。寧ろ、向こうでもっていてくれたらとても嬉しいような気がした。


「って駄目だよ」


何を考えているんだろう、カキョには私なんか早く忘れてもらわないといけないのに。もう一生関与しない存在なんて。


『何一人で泣いてるのよ。』



「っ!?……あ、ああもう終わったの?」


ふと声がしてそちらの方を向くとスカイ・カップが居たのでちょっと驚いた。いや、すごく驚いた。


『……ええ、済んだわ』




ついに、すべてが終わる。

足を止めたら、きっと私は進むことができない。

決心がつき、私は扉を思いっきり押した。


「…え、あの、これ開きませんが?」


見た目に反してひきドア?

でも引こうが、押そうが、スライドしようが扉は開かなかった。


『何をバカなことしているの?貴女はこの先には行けないわよ?』


スカイ・カップの言葉に耳を疑った。

扉の向こうはあの世、そこにいけないってどういうこと?

『貴女、本当のところ向こうの世界で暮らしたくない?』

いきなりどんな質問だ。

「…そりゃあ…できるなら向こうに行きたいよ。
でも、私の願いはかなったし」


『貴女の願い事、「あの世界の住人になって暮らす」になってたわ
まったく…違う世界の住人になって永住だなんて。
貴女以降はその願いも規制しようかしら、不老不死と同じように。』


スカイ・カップにめちゃくちゃ愚痴られてる。

それはいいんだけど、どういうこと?

「え?つまり…え?」


『きっとお節介な誰かさんが書き換えたのよ。平等を主張するような誰かさんが。
貴女をこれからまたあの世界に送る
次はこっちの世界に帰ってこれないわ』


覚悟はいい?と訊かれる。

それにはもちろんハイと答える。

つまり、私の願いは変わっていたらしい。

お節介な誰かさん…それは多分神様がやったってことだから…

許してくれたんだ


あの世界で幸せに暮らしていいよって。


「向こうに行く前に、また頼んでもいい?」




『“ ”…でしょ?』

なぜわかったし。

そう言うとあなたの考えくらいもうわかるわ、と言われた。


「うん。お願い」


注文が多いわね、本当に人使いの荒い。

だから、キミは人じゃないでしょ、相変わらずのやり取りをする。


『これは、今度はもう一生戻らないないと思うけど…いいわね?』


「もちろん、そうじゃなきゃ面白くないもの」


わかったわ、

その声が聞こえたときには、またあの時のように目の前は明るく、白く染まっていって…








bkm
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