-->避けろ!助けろ! | ナノ ▼30 終日、世界は終わって





これが、最後の記憶


「心拍数が下がっています!」

「もう限界だったのか…」


「可哀想に…まだ若いのに」


医者の声、他の患者の声、囲まれているのは一人の少女


私。



ついに死んじゃうんだ。

覚悟はできてた。

だからしっかり見ることができる。

何で私がこの世界からあの世界に行けたのか。


蝶が飛んでいた。

死にかかった私の隣、スカイ・カップのように綺麗な空色の蝶。

…いつの間にか、場面が転換していた。


『願い事、決まった?』


「…ここは、あの世?」


この世界に来る前、初めに見た何もない夜道には昔懐かしい外灯が空間を照らしている。


『そうだけど、厳密にはあの世に通じる路ね。
まぁ、ここは願いを叶えるのに適した場所だから』

もう願い事は決まっていた。

「願いは、最期に私がずっと憧れていた世界でね、みんなと同じ様な能力を持って"満足するまで冒険してみたい"





スカイ・カップはその願いを聞き届けた。

かと思いきや


『あら?それだけでいいのかしら』


とか言ってきた。




「まだ叶えられるなら、私の記憶を消してほしい。名前と原作、常識以外の記憶全部
こんな記憶あって旅なんかしたくないし」


『…ええ、わかったわ。ただし、そういう過去の記憶はいつかは思い出すことになるかもしれないけどいいわね?』


コクリとうなずくと、私とスカイ・カップの間が眩しく光る。


『それが、貴女の望んだ世界』



ああ、ついに、

憧れていた世界での冒険。


叶ったんだ。







最後の記憶が頭の中に巡ったのは殆ど一瞬だったみたいだ


私の元に運命が変わって生きているみんなが駆け寄ってくれる。

勝った

終わった


全て。


「莉緒!!」


ああ、カキョが生きている。
本当に運命を変えられたんだね。実感できた


「やっぱり無茶しやがって…」


承太郎が苦笑していた。
ごめんと返す。


「これで終わったのか…」

みんな無事。
多少怪我はしているけど。

みんな、生きている。


私は、死を回避させたんだ。


「莉緒、怪我は…ッ!?」


「どうしたの?カキョ…あぁ。」

カキョが驚いていた。

私の足が、ほんのすこしだけど

透けていた。


なんでこれでたてるかとかはこの際どうでもいいよね。

本当に最期。


みんなに伝えるべきことを伝えないと…





みんなに、感謝してもしきれなかった。


「この世界に来て、私はみんなに迷惑をたくさんかけました」



最後まで泣くな、別れは笑顔で。

私は無理に笑っていた。


「最後まで、本当にありがとう…ございました…」


みんな、なにも言えなくなっていた。


「莉緒…感謝をするのは君じゃなく、僕達のほうだ。」


しんとした雰囲気のなか、カキョが私の方に歩みより言う。

近くに、カキョが居る。


「カキョ、私はキミの事を…」

消える直前の悪あがき。自然と言葉が出てきて、

でも

好き、一言は言えない。

なにかが私の言葉を止める、
ダメだ言っちゃ。って

だって

私は違う世界の人間で
私はもう生きていない人間

彼は死を回避した
彼は生きている

これからきっと
私の知らない誰かと出会って

知らない誰かと恋をして

私の知らない生活を送る

だから

居ない私は


「とても良い、親友だと思ってるよ!」


永遠に友達でいい


私は干渉しちゃいけない。


「だからね、」


私の望みは


「ずっと私と友達で居て」


君の記憶の一部に残る


それだけでいい







bkm
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