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▼25 ホテルと記憶と悲しみと


(三者視点)

「スカイ・カップ、出てこい。」


莉緒が完全に寝たとき、花京院がしんと静まり返った部屋で言う。

「…君がスタンドじゃないのはわかっている。」


そう言うと、莉緒の近くから青く大きな蝶、スカイ・カップが現れた。


『あら、ばれてたの。私がスタンドじゃないって』


「…莉緒がこの世界の住人じゃないことを予想していた時から、君がスタンドじゃないことも予想していた。」


勘が鋭いわね、と言ってスカイ・カップは笑う。

『で、用件は?まさかそれだけじゃないでしょう?』


スカイ・カップが言うと花京院は当たり前だと返す。



「いくつか訊きたいことがある。
君の能力は何かを溶かすことだったが、莉緒の記憶を消したのも君か?」


『……』

少しの沈黙、

そのあとスカイ・カップは驚いたわという。

『ええ、そうよ。正式に言えば彼女の記憶は私が溶かした。
先に言うわ、彼女が望んだことよ?
ただ、過去の記憶は完全に溶かすことはできないから少しずつ思い出してしまう見たいだけど。』

「じゃあ次の質問だ。」

せっかちね、と言うが花京院は質問を続けた。

「彼女にとってこの世界は何か映画や、本、ゲーム、もしくは漫画だったりしているのか?」


『…ノーコメント。これを答えたら彼女が悲しむわ。

でも、どうしてこんな答えが出たのかしら?』


「莉緒はこの世界に起こることを色々と知っていた。
最初は未来人って可能性も考えたけどこの旅が教科書とかに乗るとは考えられないし、
仮にこの旅のメンバーの子孫だとしても此処まで正確に知ることはないと思う。そう考えると答えはそれ以外になかった。」


全部の予想が当たっている。

このことにスカイ・カップは驚いていた。


『よく、そこまで考え着くわね。』

「そういうサガでね。」



「…最後の質問だ、もしこの旅が終わったら莉緒はどうなる?」


『それもノーコメント。知ったとしてそれで貴方が何かできるわけでもないし、彼女も悲しむわ。』


「ほとんど、ノーコメントだな。」


少々花京院はいら立っていた。
そんな様子を見て、スカイ・カップはからかうかのように


『…本当に貴方この子のことが好きなのね。』

と言った。

「ああ、そうだけど何か?」


だが、あっさりと肯定する花京院にスカイ・カップはおもしろくなさそうだった。


『良かったわね、多分それ両想いよ。

でも、だからこそ本当に悲しいものね、貴方達、どうあがいても幸せになれないもの。』


「―ッ!それはどういう…」


訊こうとしたときにはスカイ・カップは消えていた。

結局一番大切なことははぐらかしたまま。

スカイ・カップとも話終わり、

花京院は仕方なくもう寝ようとしたそんな時


「…一人に、しないで…」


「莉緒?」


起きているかと思ったが、寝言だったようだ。


「おねがい…一人にしないで…」

また、嫌な夢でも見ているのだろうか。

「僕が居るから、安心して。」


そういって莉緒の髪をなでる。


どうしても失いたくない。

もしかしたら莉緒はこの旅が終われば居なくなってしまうかもしれない。

スカイ・カップの言っていた言葉が頭の中で繰り返される、

それでも


初めて、好きになった彼女を絶対に失いたくなかった。


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