-->避けろ!助けろ! | ナノ
▼25 ホテルと記憶と悲しみと



「おー、懐かしの二人部屋ー。」

家出少女とシンガポールで止まった以来の二人部屋。

やっぱり、一人部屋よりも二人部屋が好きだ。


「はしゃぐのはいいけど、あんまり騒がないように」

「わかってまーす!」


くじの結果、カキョと同室になりました。


決まった時のジョセフさんの顔を思い出すと、本当にどうしたのだろうと思った。

それはともかく、まあもうシャワーも浴びたし、パジャマにも着替えたからすることと言えば寝るくらいなもので。

「どちらにしようかな…よし!左の窓際ベッドは頂いたよ!カキョ」


二つあるうちのベッドどちらに寝るかを決めていた。

「莉緒がそうしたいならそれで構わないよ」


よし!これでエジプトの夜景は私のものだ!


ベッドで寝転がっても少し見える夜景に満足しつつ、ぼーっとしはじめた。





「莉緒、」

「ん?なに?」

カキョのほうを向く、どうやら真剣な話みたいだ。


「最近、君元気がないけど…何かあったんだよね?」


疑問じゃなくて断定だ。


「…そう?いつも通りだけど」

なにもないよ、と言う。

「入院したあたりから、何か無理やり忘れようとしてるよね?」


…なぜそこまでばれたし。

「なんでそんなことまでわかるの?」

「だって、莉緒ときどき何か思い出しては落ち込んでいるじゃないか」


そこまで表情に出てたっけ、そんなことないと思うけど。

…他の人にもわかられてるのかな。

「あのね、記憶…最近結構戻ってきたの。」

私が言うと、カキョはあまりいい記憶じゃなかったんだと言ってくれる。

正解だ。

「白い部屋に私はずっといるんだけどね、多分あれ病室だと思う。
何であの部屋から出ないかは知らないけど。
それで…最近戻ったのは中学の頃の記憶だった。」

カキョは私の話を黙って聞いてくれる。

「両親が、私のところに行こうとした時に、交通事故で二人とも死んだ。
夢の中の私は、なんで私ばかりこんな目に会わなきゃいけないのかって叫んでいた。」


しゃべっているうちに涙があふれてくる。

この前夢を見たときにはこんなことなかったのに。





「…私は、きっと疫病神なのかもしれない」


そう言った時、私はカキョに抱きしめられた。

「カキョ…?」


「そんなことない…莉緒は疫病神なんかじゃあない。
いつも君は僕たちを助けてくれた、君が居なきゃ勝てなかったことだってある。
だから、自分をそんな風に言わないでくれ…」


涙が止まらなくなっていた。

この世界に来て、こんなに泣いたことあったっけ?

いや、なかったとおもう。


ずっと、あの夢を見るようになってからずっと強がっていた。


元の世界に戻ったらと思うこと


私の存在がもしもみんなに不幸な影響を与えてしまったらと考えるといつも怖かったのに。

「ごめん、カキョ…私ね、黙ってたことがあるの。」


「何を?」


私はもう言うことにした。

「私、この世界の住人じゃない。」

「やっぱり」


え?

耳を疑った、つい抱きしめられていたにもかかわらず顔を見てしまった。


「や、やっぱりとは?」


「記憶がないとは言っても、君が居なくなれば誰かしら捜索願は出すはずだし、
ニュースくらいにはなる。
でもそんなこと一切なかっただろ?
昔の記憶には病院に居たっていうけど病院に居たのならなおさらなにかしらに報道されないのはおかしい。」


なぜそこまでわかった、カキョはもうなんかすごいというの超えている気がする。




「でも、そんなことは関係ない。莉緒が異世界人だろうと大切な仲間だからね。

…今は」


「カキョ…」


最後に何か不穏なワードが聞こえた気がするけどスルーすることにした。

でもやっぱり、この世界がマンガの世界だってことは言えなかった。



さんざん泣いて、重荷になってたことを話すとすっきりした。


「…今日は本当にありがと、カキョ。」

「莉緒の負担が軽くなったなら、良いよ。」


泣き疲れもあって、今はもうすごく眠い。


「じゃあ、おやすみ、カキョ」

「ああ、おやすみ」


確信した。

私は、カキョのことが好きだ。

マンガのキャラとしてとかそんなんじゃなくて、一人の人間として。

すべて終わったら、この気持ちは伝えてもいいかな?

そんなことを考えながら

今日は、良い夢を見られるといいな、

そんなかなわない願い事しながら私は寝た。






bkm
第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -