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万華鏡のようなお話
こちらの続きと言うか蛇足のような話です。









自分だったら、もっと自分が由紀信じる事が出来たら、勇気があったら、彼女を助ける事は出来たんだと。あんな風にならなかったと。

たらればの自問自答が何度も続き、また怒りがこみ上げ、万華鏡を振りあげる

「ダメだよ…、イル」

振りあげた手を、静かに止められる。
その手を止めたのは、誰でもない、ミェーレ。

「……なんで」

「それ、あの子にあげるんだって作ってたのに、壊しちゃだめだよイル」

ミェーレは、感情的になったイルーゾォと話すときは決まって昔のように呼ぶ。
掴まれた腕は、無理に振りほどこうと思えば簡単に振りほどける。
けれど、その水を指す行動でそれをする気にも、万華鏡をたたきつけようと言う気にもならない。

「ミェーレ……ミェーレ、あの子、」

「わかってるよ、見てたもん…。鏡から、全部、無表情だったけれど辛そうに彼女を運んでいたギアッチョも」

「……」

「仕方のない事と割り切ろうとしていたプロシュートやホルマジオも、どこか割り切れずにいたリゾットも」

「もういい、わかった」

「何か手掛かりはないかって調べてたメローネも、泣いていたペッシも、全部、全部見てた。」

「わかったからッ」

「……一番にあの子を見に玄関に走ったイルも」

「――ッ」


真直ぐとした目で、イルーゾォを見据えて、でも涙をこぼして見てきたものを言うミェーレを見ているのが耐えきれず、その言葉が言い終わらないうちに抱きしめていた。

「イルがあの事友達になったのね、見てて楽しかったんだよ」

「……友達に、なれてたか?」

「なれてたよ、なれてた、……なのに、ごめんね、」

「なんでミェーレが謝るんだよ…」

抱きしめてしまったためにミェーレの表情はわからない。
けれど、はなすたびに嗚咽が漏れているから、泣いているのは間違いなかった。

「だって、あの子も、私みたいに……」

「それはミェーレが悪いんじゃあないッ!!」

声を荒げて、イルーゾォは反論する。
ミェーレの体がびくっとわかるほどに反応したのがよくわかった。

「俺が、もっと……あの子を信じて、勇気があったら、ミェーレのことを、打ち明ける事が出来たら」

「イル……」

イルーゾォの声にも、嗚咽が混じり始める。
そうしたら、きっと、

イルーゾォにはわかっていた。こうなって一番悲しんでいるのが誰なのか。
そんな事にさせない未来を作れたのは誰なのか。

「やっぱり、ギャングなんて、マファイアなんて、最低だ」

その最低の中に自分もいると言うのを理解しながら、矛盾を吐きだす。
いいや、矛盾ではない。自分も最低だという意味を込めているのだから。

「うん、私も、大嫌いだよ」

「……だよな」

「イルーゾォと、ここにいる人たちは好きだけどね…あの子を殺した人たちは許せない…」

「……うん。絶対に、許せるわけがない」


ギャングなんて、大嫌いだ。

自分と彼女のすべてを奪い、あの子を殺し、チームに首輪をつけて利用する奴らなんか、憎んでも憎みきれない。

「絶対に、取り戻してやる……」


万華鏡を回転させて出来た色彩と模様が、また回転させて全く同じものが見られないように回転していく世界で。

それでも中身は変わらないように、彼の由紀に対する感情も変わらない。
その感情は、きっと
友情だったんだろう。

『素敵だね!その能力!!』

そう言ってくれたのは、二人目。
初めに言ってくれたのは、今となっては守るべき存在。




  

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