「テメー…どこから入ってきやがった」
目の前に居たのは、血塗れのワイシャツを着たメガネの女。
動けないのもそのはず。女に乗られて居たからだ。
「どこから……外から?」
「そういうこと聞いてるわけじゃあねーよ。…血塗れっつーことは誰かもうやってきたか?
それともリゾットのやつが殺り損ねたのか?」
「リゾット…?」
「まぁいい、さっさとどけ。」
首を傾げる女に言う。
そして、言ったところで彼は気付いた。
動けないのは確かだが、重みで動けないわけではないと。
だいたい、女の体重でここまで動けないはずがなかった。
「テメー、一体何者だ…?」
スタンド使いだとしたら、スタンド使いならここに入ってくることも、動きを完全に封じることも可能だろう。
しかし、その肝心のスタンドはどこにも見当たらない。
「何者、あ、ジュン。画家やってます」
相当の使い手か、そんなことを思ってはいたがいきなり素性を話して来た。
「…別にそういうことを聞いてるんじゃあねーよ。」
そのため、彼は少々拍子抜けした。しかし、警戒を解くことはない。動けない状況は未だ変わらないからだ。
「私、貴方に頼みたいことがあるんです」
「頼みたいこと?」
何を言ってくるかと思えば、今度は警戒すらも解きそうになる。
「初めて、触れることも、会話することもできたから…だから」
そのとき、部屋のドアが開いた。
「プロシュート、もう起きているか?ボスから書類が来ている」
入って来たのはリゾット。
ようやく、この事態がどうにかなりそうだとプロシュートは思った。
「おいリゾット、ここのセキュリティーはどうなってるんだ?勝手に女が入り込んでるぜ」
「……女が?誰かが連れ込んだんじゃあないのか?今日は誰もみていないが…」
「誰も見てなくても、俺の目の前に…」
目の前を見ると、先ほどまで居た女、ジュンはいなくなっていた。
ありえない
ついさっきまで確かに居たはずだ。
それに何故か、体は動くようになっている。
まさか、寝ぼけていた?
色々な思考が混ざる。
しかし、確かに乗られていた、触れられていた感触は残っている。
『初めて、触れることも、会話することもできたから…だから』
だから、なんだったのだろうか。
本当に何者だったのか。
だが、いなくなったものを考えていても仕方ないとして、プロシュートはこの件について考えるのをやめた。
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